ベトナム中部は世界遺産のエリアとして旅行者に知られていて、日本人観光客を見ても年間5万人以上がここ中部地方に訪れます。中部旅行者がまず間違いなく訪れるのが、「ホイアン」。日本人なら大正、昭和を感じる古き良き町並みが印象的。今回紹介するのは、そのホイアンのメインストリートであるグエンタイホック通りに佇む一つの家屋。「進記家」です。
アクセス
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世界遺産に指定されているホイアンの歴史保護地区の中心はチャンフー通り、グエンタイホック通り、そしてバクダン通りとなります。進記家が建つのは、そのうちのグエンタイホック通り。
また、進記家に入るには入場券が必要です。入場券は5枚綴りになっていて、入口で管理人に切ってもらってください。予め売り場にて入場券を買っておかなければ、ホイアン内の観光スポットには入ることができないので注意が必要です。
爛漫と奥ゆかしさが共存する内部
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進記家は200年以上続く古き旧家。言ってしまえば、"当時の普通の家"なのですが、こちらはユネスコ世界遺産に登録される前から政府が文化保護をしていた由緒正しい家。1985年に政府文化省が、この進記家をホイアンで最初の文化遺産に登録したのがはじまり。ホイアンの歴史の一ページ目というわけです。
3か国の建築方法
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進記家を見学する際は、壁、柱、梁、天井と隅々まで手に触って調べてください。17世紀当時は交易の最盛期。アジア・西洋とさまざまな国の人、文化、習慣が入り乱れ、その一部はホイアンの文化として根付くことになります。その最たる例が『建築』。
ホイアンの建物は日本・中国・ベトナムそして一部西洋の建築技法が使われています。支柱や梁、天井などの設計は日本の京都における建築技法が取り入れられています。一方、中国の爛漫派手やかな内装も見ごたえがあります。
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進記家は2階建てですが、一般客は2階へ上がることはできません。1階は入口正面に広い居間が広がり、先代故人を偲ぶ神棚があります。その奥には写真上ののように天井がない吹き抜けの中庭に出ることができ、井戸が一つあります。当時はここが台所としての役割だったのでしょう。
かなり不思議な作り、間取りではありますが、実はベトナムではいまだこのような家も多く、田舎町に行けばしばしば見られる構図です。ちなみに、ベトナムでは首都圏であっても水道インフラが整備されていなく、いまだ井戸水を引いているところも多々あります。
支柱をご覧になって
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"螺鈿(らでん)工芸"という言葉はご存知でしょうか。壁は柱に木片や貝殻の破片を埋め込んでデザインする伝統工芸です。世界中で重宝されている技法で、西洋では古代ギリシャ、ローマ文明が栄えていた時代にはすでにあったと言われています。中国やアジア各国でも盛んに行われ、日本では奈良時代のころに入ってきたとされています。
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こちらの伝統工芸は中国由来と思われます。家内の支柱のほとんどにこのような仕掛けが見られ、美しい金色や銀色で施されています。充てられているのは貝殻なので、光の加減でゆらゆらと輝くのが特徴。また、ホイアンのトゥボン川対岸には木彫りの村があり、そこでは現在も職人が螺鈿工芸を作っています。
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漆塗りされたテーブルと椅子にも螺鈿が散らばっています。現在ではベトナムの伝統工芸として確立されていて、お金持ちの家のステータスとみなされています。日本人はこれをみてお洒落と感じるでしょうか......?
台風の時期は大洪水に
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壁にチョークで引かれているこの白い線。こちらは水が冠水した水位を表しています。ホイアン含む中部地方では、毎年台風による洪水被害に悩まされています。現在でも台風の時期である9月10月は道路が冠水して、自宅まで水は押し寄せてきます。当時の人々は1階が完全に浸水するため、水が引くまでは2階で生活をしていました。
洪水の旅にホイアンにある旧家は老朽化が進み、それは現在も解決できない問題となっています。以前ベトナムの新聞には「近い将来ホイアンの町が消える」という見出しがありました。世界遺産に登録されているので、政府の許可なしでは家を修繕できませんし、現状保存、維持が遺産保護の大前提。現在も政府は解決策を模索しているとのこと。
お土産処も
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ベトナム雑貨も御覧のように売っています。ベトTや木彫りの置物、陶磁器、水牛の角で作った調度品などは王道土産ですね。また、ホイアンはシルクとランタンが名産なので、そちらを選ぶのもいいかもしれません。シルクは驚くほど安い値段で買うことができるはずです。
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名称:進記家(Tan Ky)
住所:101 Nguyen Thai Hoc St. Hoi An
営業時間:8:00~12:00/13:30~17:30
[local, 25, 246]