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世界遺産ミーソン遺跡に行く前に知っておきたい5つのこと

ミーソン遺跡は1999年にユネスコ世界遺産に登録された、ベトナムの誇る観光スポット。外国人旅行者にとっては、中部観光におけるホイアン・ミーソン遺跡は王道ルート。中部旅行者の日本人もほとんどが足を運ぶといわれていますが、そのミーソン遺跡に行く前に知っておきたい基礎知識というものがあります。先人の知識と歴史、伝説が残る遺跡は、知れば知るほど見聞が広がります。事前に知識を蓄えれば、観光当日は楽しさが倍増することでしょう。

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今回はミーソン遺跡に関わる知識を5つご紹介したいと思います。

知識1:ミーソン遺跡の基礎となる歴史

IMG_2548.jpg世界中の観光客が訪れる

まずは基礎となるミーソン遺跡の概要。ミーソン遺跡とはそもそも何なのか。それすら知らずに向かうのは、遺跡に対していささか礼儀に欠けているとは思いませんか。ガイドブックにも多少の説明は載っていますが、それでは少し不十分。

歴史:ミーソン遺跡はかつて諸外国との交易により勢力圏を拡大したチャンパ王国が造った西域です。そのチャンパ王国は2世紀~19世紀まで栄えた海洋国家ですが、ミーソン遺跡はその内、7世紀~13世紀の間に建てられました。チャンパ王国が造った聖域はミーソン遺跡だけではありませんが、ここは最も規模が大きく、チャンパ王国が最重要視していた場所となります。そして、1999年にその歴史・文化的価値が認められて、文化保存を目的としたユネスコ世界遺産に登録されました。

知識2:チャンパ王国とチャム族の因果関係は実は不明

IMG_8955.jpgベトナム人(キン族)とは顔つきが異なるのが分かる

ガイドブックでも、現地のツアーガイドでも必ず説明されるのが、「現在中部中南部に暮らしている少数民族のチャム族は、チャンパ王国の末裔(子孫)」というもの。そこで、知っておいて得する豆知識が、こちら。

実は、チャンパ王国とチャム人の因果関係は解明されていない

チャム人に聞いたところ、「私たちはチャンパ王国の末裔です」という応えが返ってきましたので、大筋間違えではないのでしょうが、まだ確固たる証拠は見つかっていません。というのも、チャンパ王国が残した歴史を記す碑文には、すべて自分たちのことをチャム人ではなく、「チャンパ人」と呼んでいました。つまり、チャンパ人とチャム人が同一種族である証拠がいまのところ見つかっていないのです。ただし、通説としては、チャム人というのは、チャンパ人という発音が長いため、後に外国人研究者が呼称としてチャム人と呼んだのがはじまりと言われています。

知識3:チャンパ王国はベトナムで稀にみるインド化の象徴

IMG_2592.jpg魅惑的なヒンドゥー教を随所にみられる

ベトナムの歴史は中国の支配にはじまりました。ゆえに、古くから仏教が国民の間に浸透していて、現在でも人口の8割程度は仏教徒という、東南アジアで例に漏れない仏教大国です。しかし、チャンパ王国は西アジア、いわゆるインド人商人がもたらしたインド化国家の一つ。ベトナムでヒンドゥー教遺跡が見つかっているのは、筆者の知る限りチャンパ王国のみ。当時北ベトナムは中国を宗主国とした仏教国だったことから、チャンパ王国が独立国家だったことが分かります。

ヒンドゥー教といえばゾウの頭を持つガネーシャや、数々の神話に登場するガルーダ、破壊の神シヴァ神にパールバディなどが有名。もちろんそれらの像もありますので、是非確認していってください。

知識4:ミーソン遺跡の内情は実はよく分かっていないのは、伝播方法が要因

IMG_2644.jpg実際の石碑。ミーソン遺跡に展示されている

日本では奈良時代や平安時代、鎌倉、室町、そして江戸と1000年以上前の時代も、ある程度真実味を帯びた史実が分かっています。それは、日本の伝播方法に依るものが大きく、日本の場合は、主に屏風、文字を紙に書き写した書物、そして祖父母から父母、両親から子供、孫への語り、本の読み聞かせとなり、これらの伝播方法は効率良く大勢に普及させることができ、書物は長い年月保存することができます。

しかし、チャンパ王国で発達した伝播方法は主に舞踊と石碑による碑文でした。舞踊は鑑賞用なので、見てもなにを意味しているのかはなかなか理解できるところではありません。また、石碑による碑文は、年月が経つと風化して文字が消えてしまうという致命的欠陥をもっています。またチャンパ王国及びチャンパ語を研究する研究者や考古学者が少ないことも挙げられます。

このことから、チャンパ王国はいまだ解明されていない謎が多く、ミステリアスな文明、種族であることが分かります。そのチャンパ王国の文明の一端に触れることができるミーソン遺跡は、どれだけ貴重なものかお分かりいただけたでしょうか。

知識5:レンガ造りの祠堂

IMG_2565.jpgなぜこのような建築技法を用いたのか

チャンパ王国が作った遺跡を見てみると、すべて一貫して同じ建築技法で作られていることが分かります。見てお分かりいただけるように、祠堂はすべてレンガを積み重ねて作っています。これは迫り出し構造、アーチ構造などと呼ばれた建築技法です。レンガを積み重ねて、その間に接着剤を使わない特殊な様式です。積み木のように少しづつレンガをずらして積み重ねることによって、内部の空間を自在に広くすることができます。また、柱を必要となしないのも特徴の一つ。

実際なぜこの方法を取り入れたのかはよくわかりませんし、耐震構造に問題がなかったのかと言われると、それも不明です。チャンパ王国の遺跡はミーソンだけではなく、中部から中南部にかけていくつも残していて、それらすべてが同じ技法を守られています。建築技術は決して低くなかったようです。

魅惑のチャンパ王国は知れば知るほど興味深い

今回ご紹介したように、チャンパ王国はミステリアスな文明を築いた国家。現在でもミーソン遺跡は発掘調査段階で、もしかしたら彼らの素性を知ることができる貴重な発掘品を発見できるかもしれません。ミーソン遺跡に訪れる前に、少しでも彼らの歴史に触れ知ることができれば、より有意義な観光ができることでしょう。

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著者プロフィール

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ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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