高度経済成長真っただ中のベトナム。特に最大の全国最大の商業都市であるホーチミンに暮らしていると、バブルを感じずにはいられません。そんなベトナムは日本の30~50年前を追っていると言われています。旅行を通してでもそれは感じることができることでしょう。町を歩いていると、人々はビリヤードやボーリングに興じ、派手な衣装を身に纏いディスコに繰り出す。高級レストランやバーも続々とオープンし、食後はビアクラブでお酒に浸り札束が飛び交う。
今回は、在住者が考える現在のベトナムをお届けします。ここで解説する情報を頭に入れておけば、他の人とは少し違ったベトナムの見方ができることでしょう。
ベトナムは現在バブルの真っただ中
1980年代から90年代初頭まで、日本は空前のバブルでした。東京の土地でアメリカ全土を買うことができると言われたほどで、GDPも右肩上がり。アメリカに次ぐ世界2位までのし上がりました。その時代を謳歌した人は皆さん口を揃えて、「あの時代はよかった」と言います。
そんな時代がいまベトナムにも到来しています。とはいっても、2016年現在はだいぶ落ち着いた感じです。5年ほど前までは毎年10%以上の価格が当然のように高騰し、日本が羨むインフレが続いていました。銀行の利息も10%以上で、筆者がベトナムに移住したときは最大で16%でした。2016年の現在でも6-7%で推移しています。ベトナムにお金を預ければ、利子だけでも相当儲けることができますね。
格差社会が広がる
ベトナムの国民一人当たりのGDPは約2400ドル。これは年間所得24万円を意味します。月の給料を単純に12で割ると、2万円にしかなりません。しかし、ホーチミンの都心部を歩いてみてください。人々はみんな10万円するiPhoneを持ち、一杯1000円するカクテルを飲み、2000円~5000円するビュッフェレストランに足繁く訪れる。数万円するバッグや服飾、化粧品を使い、マックやバイオのパソコンを持つ。一見するとそこらの日本人よりもいい生活をしているかのように見えますし、実際彼らの多くは高い水準で生活を送っています。彼らは10年前に土地を買って、バブルの転売で設けたいわゆる成金的な人たちであったり、自分で店を持って成功させた人たちです。数千万円する土地やマンションをいくつも持っている人がほとんどだから驚きです。
しかし、一方道端で一杯50円のコーヒーを売る露店もいまだ多いですし、物乞いの姿もいたるところで見ることができます。これがベトナムの光と影。日本のように政府援助がないので、自分で仕事を作るしかないですし、お金がなければ首が回らないのが現状。仮に月収15万円以上が富裕層というくくりにすると、人口に対する割合は1割を切ります。その大半がホーチミンやハノイといった都心部に密集しているので、必然と格差社会が露見することになります。
人々は店/会社を持つことにあこがれを抱く
ベトナムを歩くとすぐにわかるのですが、通り沿いにはびっしりと店が並んでいて、住宅は路地裏に広がっています。ベトナム人は商売魂旺盛で、人々は自分で事業を立ち上げることを目標にしています。日本のように「会社で働くサラリーマン」が出てきたのはごく最近のこと。ベトナムは1986年のドイモイ政策以前は会社はすべて国営でしたので、そこで働ける人も何かしらのツテやコネ、裏の力がないと採用されませんでした。ですので、人々はみんな自分で仕事を作ってきたのです。その根性は現在も受け継がれ、多くの人がサラリーマンを経たのち、起業を目指しています。また、多少お金を持っていれば、サラリーマンの傍ら副業でカフェや通販を営んでいる人も多くいます。
これも「成功したい」、「今の生活より、もっと裕福な生活を送りたい」という夢と意地がそうさせているのだと思います。現代の日本人には欠けてしまっているものでもあるのかなと思います。
バイク社会からの脱却はまだまだ?
ベトナムはバイク天国と呼ばれるほどバイクの量が多いです。全国的にみると4人に1人が所有している計算ですが、ホーチミンやハノイといった都心部では、まさに一人一台です。バイクはホンダが最も信頼が高く、続いてヤマハやスズキが続きます。新車は20万円程度で、イタリア車だとその2倍はします。ただ、人々はバイクを財産と考えているので、なるべく高いバイクを買おうという心理も働いているようです。
車は交通渋滞と排気ガス増加を懸念して、政府が関税をあげているため、一部の富裕層以外は持つことができません。安くても400万円以上はします。また、現在日本主導で地下鉄工事がされていて、近い将来鉄道も市内を走るようになります。しかし、在住者の多くは疑問視しています。鉄道インフラというのは非常に重要かつ、都市化が加速するファクターではあるものの、ここまでバイク社会ができあがってしまったベトナムでも通用するのかということです。なによりもバイクが気軽すぎて、便利すぎるからです。しかし、もしかしたら、そのような懸念も覆して、数年後には人々はバイクを捨てることもあるかもしれませんね。
若者と中高年以上の隔たり
近年はベトナム人も高校大学を卒業するのが当たり前の時代となってきました。そこで必然的に生まれるのが現代の若者と、中高年以上の大人の思考の隔たりです。現在の若者はフェイスブックをしたり、ネットサーフィンなどで情報を集め、グローバルな思考を日ごろ養っています。いっぽう、年配の方は、いうなれば「ベトナム以外の習慣、文化を知らない」のです。
先日筆者が友人(20代)の家族宅へお邪魔したときのことです。
友人が食事に招待してくれたのですが、そこでこんなことが起きました。
テーブルを囲んで筆者と友人、そして友人の父母で食事をしていたのですが、友人の父が椅子に足をついて食事をしはじめました。友人は「筆者に失礼だからやめて」といったのですが、これに父親が腹を立てた様子。「失礼なもんか。これがベトナムの習慣だ!」とまくしたてました。友人も負けじと、「それは習慣なんかじゃない。ただマナーを知らなかっただけ」と言い返しました
このような隔たりというのは、彼らの生活に交じって入るとおもしろいほどよく見かけます。時代の転換期というものを見せられた気がしました。
ベトナムは深く知れば知るほど味がでる国
たとえ短期間の旅行でも、ベトナムの町を歩いていて、そこで出会う風景、人と接すれば、大なり小なりベトナムの本質を目にすることができるでしょう。それは無視することもできるのですが、少し立ち止まって日本との違いを客観的に考えてみると、非常に興味深い発見につながるかもしれません。旅行は異国情緒を感じる旅でもあります。より深くベトナムを知れば、より旅行が有意義なものになることでしょう。
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