夜の定番スポットとして、数々のガイドブックに紹介されている水上人形劇。もともとは北部発祥でしたが、現在では南部ホーチミンでも鑑賞できるようになりました。水上人形劇はホーチミン市内では今回紹介するロンヴァン水上人形劇と、歴史博物館内で見ることができます。しかし、歴史博物館内は規模が小さいですし、夜はやっておりません。ホーチミンのナイトスポットの一翼を担う水上人形劇は、是非夜の帳が下りたころに鑑賞したいもの。
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みなさんもホーチミン旅行の際は、なるべくマストで訪れてみてください。ロンヴァン水上人形劇をご紹介します。
個人とツアー双方可能
ロンヴァン水上人形劇はホーチミン市内1区、グエンティミンカイ(Nguyen Thi Minh Khai)通りに面しています。広い面積でツアーバスが止まることもできるよう配慮されています。場所が中心エリアなので、個人で行くこともできますが、ご自身でチケット売り場で購入しなければなりません。席は全席指定席です。また、時間は不定期に変更されますので、事前に現地に行って、当日の開幕時間を調べるようにした方が確実です。
もしそれが煩わしいのであれば、ツアーで行くといいでしょう。ツアーの場合は水上人形劇以外にもディナーが付いたり、劇場までシクロで行ったりと、旅行会社オリジナルのサービスが付帯していますので、よく吟味してください。
17からなるプログラム
水上人形劇は一つ2~3分ほどの演目が全17個続きます。上演時間は約45分。各演目には話に一貫性がないので、内容が理解できなくとも次に期待することができます。入口では写真上のようなパンフレットを受け取ることができ、こちらで17演目のプログラムを確認することができます。日本語表記もされていますのでご安心ください。
劇場内へ
劇場内は全席指定席のため、ぎりぎりに入っても問題ありません。ただし、座席間と通路は狭いので、あらかじめ大まかな場所は確認しておいたのち、外で上演時間まで待機するのがいいでしょう。
時間になると、壇上の幕が上がります。ステージ奥にはため池があり、そこで人形たちがコミカルな演技をみせてくれます。最上段は冷房があまり届かないためかかなり蒸し暑いです。どのように席が決まるかはわかりませんが、中段より下段ならラッキーと思っていいでしょう。
ただし、1列目は人形たちが飛び跳ねることによる水しぶきがかかることがあります。カメラなど精密機械をお持ちの方はご注意ください。
夜のエンタメライフ「水上人形劇」
水上人形劇はもともと北部の農村が発祥で、1000年以上の古い歴史を持っています。当時は農村の間でしばしば村民たちが楽しむ大衆娯楽であったり、雨ごいの儀式のようなものであったとされています。その後、水上人形劇は現在のハノイの都心まで広まり、一説には当時の皇帝が鑑賞していたり、宗主国の中国にも披露していたといわれています(あくまでも説です)。
近代以降は、ベトナム政府が早々に観光資源に目をつけて、水上人形劇の文化の保存と分布に力を入れました。現在ではベトナム人だけではなく、外国人旅行者の観光スポットとして人気となっています。
演者たちは伝統楽器を用いてコミカルに演じる人形たちをサポートします。会話や掛け合いのやり取りもすべて彼らが行います。それらはすべてベトナム語になるので、会話の内容などは分かりませんが、ベトナムの伝統であることは肌で感じとることができるはずです。
ベトナムの文化を知る
演目はすべてがベトナムの古くから伝わる文化です。風俗、慣習、伝統、伝説、生活習慣、神話など。ベトナムの歴史を垣間見ることができるでしょう。ベトナムの農村でののどかな生活の様子は見るだけでわかりやすく、また、それは現在でも見ることができます。例えば水牛の上に乗った子供人形の様子。それは農村地帯では古くから水牛が特別な動物であることが分かります。現在でも田舎へ行けば、水牛が田畑を耕したり、農民が水牛車を引く風景をふつうに見ることができます。
こちらはレロイ王と亀の伝説の再現。中国の明の軍勢が押し寄せてきたとき、レロイ王はハノイのホアンキエム湖に住む神の遣いである大亀から伝説の神剣を授かります。一振りすれば明軍は恐れをなし撤退していきます。そして、この様子はレロイ王がその神剣を亀に返す様子。
この大亀は伝説上の亀ですが、神話のモデルと言われたシャンハイハナスッポンと呼ばれる大亀は、実際ホアンキエム湖に生息していました。しかし、2015年にその亀の遺体を引き揚げることになり、当時は不吉な前兆として大きな話題となりました。
ベトナム神話を垣間見る
ベトナムにも日本同様たくさんの神話があります。こちらもその一コマ。ベトナムでは古くから鳳凰や竜、ユニコーン、亀などが神話では神の動物とされています。亀以外は空想上の動物ですが、古くから深い信仰心があり、ベトナムのことを「タンロン=竜」と呼び、ベトナム人は竜の子孫だと信じられています。
ツアーでも人気のメコンデルタのミトーのあるティンザン省とベンチェー省の間には4つの小島があり、これらには上記の4つの動物の名前が島に名づけられています。
日本にも羽衣伝説があるように、ベトナムにも仙女(天女)の神話が存在します。もともと中国由来だと思うのですが、詳しい伝播方法は分かっていません。ベトナムは中国に1000年以上支配され続けてきた歴史があるので、現在でも中国神話がベトナム神話の根底に深く根付いているのを端々に感じ取ることができます。
竜(ベトナム語:タンロン)はベトナムの象徴でもあります。上空から見ると南北に連なるいびつな国土が竜に似ているといわれていて、ベトナム=タンロン(昇竜)とも呼ばれています。昔のベトナム人の中には「タンロン」という名の男性も多く見受けられるほど。
水上人形劇の最後のフィナーレを飾るのも、やはり竜。盛大な火花を散らし、その光景はまるで火を噴く竜のよう。
水上人形劇の四肢を動かし、まるで生きているかのように人形を動かしている演者は、ため池に半身浸かりながら、裏で糸を操っています。全演目が終了したら、演者の人たちが表に出てきてくれます。惜しみない拍手をおくってください。また、伝統を守るため、演者はすべて北部出身の人らしいです。
水上人形劇は毎夜定時で上演しています。ホーチミン旅行の夜を一層盛り上げてくれること間違いなし。はずれなしのナイトスポット「水上人形劇」をお楽しみください。
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