ホーチミン市の最大の観光エリアである1区は、名実ともに市内の中心にあります。雄大なサイゴン川の傍に広がる町はプチパリ風情を楽しむことができ、雑貨店でショッピング、ベンタイン市場で値段交渉なども体験できる一大観光スポット。その南方、サイゴン川の支流が蛇行して流れるところを超えた先には、4区、そして7区と町並みが続いています。
今回歩いてみるのは7区。一風変わった町並みが印象的です。
7区は2つの区画で構成されている
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時折ガイドブックでも紹介されていますが、7区にはフーミンフンと呼ばれる地区があります。在住日本人やベトナム人に「7区に住んでいます」と言うと、必ず「フーミンフン?」と訊かれます。外国人といえばフーミンフンに住んでいるというイメージが強いためです。フーミンフンは以前もご紹介しましたが、外国人区と呼ばれる高級住宅街。事業で成功したベトナム人や外国人駐在員が多く暮らす町です。ほんの十数年前までは沼地だったのですが、現在は御覧のようなヴィラや高級マンションが建ち並ぶ平和なエリアとなっています。
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フーミンフンを歩いていると、なんだか自分がベトナムにいるとは思えなくなります。バイク天国らしいバイクの大渋滞はなく、行き交うの少量の車程度。慌ただしいビジネスマンよりも、芝生に寝そべったり、バドミントンなどを楽しんでいる子供たちの姿の方が多く、週末はバーベキューをするファミリーも少なくありません。また、川では在住欧米人がフライボードのような高級な遊びをして楽しんでいるのもしばしば見かけます。
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フーミンフンは別名「コリアンタウン」とも呼ばれる韓国人街が構成されています。日本人町といえば市民劇場近くのレタントン通り界隈を主に指しますが、韓国人街は規模が違いますね。ちなみに、韓国はいち早くベトナムに投資して以来、数多くの韓国人がここで暮らし、その数はホーチミンだけでも5万~8万人と言われています。一方日本人は1万人前後。在住者コミュニティの規模が違いますね。韓国料理を経営している個人レストランもたくさんあるので、本場の韓国料理を食べたいという方は、ここで食事をするのもいいでしょう。筆者は韓国へ行ったことがありませんが、内装や雰囲気、食卓に上がる料理の数や味は本場のものなのだなと感じます。
[local, 349]フーミンフンではない7区とは
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7区は端的に言えば、「フーミンフンと、それ以外の町」で構成されているといえます。では、"それ以外の町"とはどのような風景なのでしょうか。それは、ローカル度満点の町並みが広がっています。もともとフーミンフンが開拓される前までは、7区は隣接している4区や8区と同様に低所得者層が暮らすローカルなエリアでした。それが近年はフーミンフンが盛況になってきた他、もとより1区に近い利便性のある区画であるため、高級マンションが建設されるようになりました。
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1区ではそこかしこに小洒落たレストランがありますね。昔ながらの個人商店や食堂は追いやられてしまっている印象があります。また、近年は政府の取り締まりも厳しくなり、無許可営業の屋台や食堂も営業ができなくなってきているようです。常識ではありますが、その反面ベトナムらしさがなくなり寂しくなってきている印象も受けます。しかし、7区は別。レストランと呼べるようなお店はほぼありません。近隣に暮らす人々は毎日御覧のような道端にはみだした屋台や古めかしい個人食堂で食事をしています。
川べりの様子はローカル度満点
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7区川沿いは非常にローカルな風景を見ることができます。若い男性たちは釣り糸をたらして魚釣りをしていたり、御覧のような果物や野菜を載せた船がいくつも停泊しています。こちらは西方のメコンデルタ地方からやってくる船が多く、いわば出稼ぎのようなもの。船に乗せた商品を物価がより高いホーチミン市内で売って戻ってくる、といった生活をしている人がメコンデルタには多くいます。
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彼らの大変なところは、船に載せている商品すべてを売りさばかなければならないということ。もちろん1日や2日では到底無理です。何日、何週間もかけて売るので、その間は船上で生活することになります。川沿いを歩いていると、そんな彼らの生活風景をのぞくことも可能です。
ベトナムの本当の姿を知ろう
1区だけの観光では、「ベトナムってすごい発展しているね」、「コロニアル建築が素敵」、「高級レストランやカフェがたくさん」そんなイメージしか残らないかもしれません。しかし、ベトナムはまだまだ発展途上国。隣町を歩くだけで、1区とは打って変わった素朴な町を見ることができます。せっかく東南アジアにきたのだから、その両方の町を見渡して行ってほしいものです。そんなときは7区を歩いてみてはいかがでしょうか。
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