タイニン省にあるカオダイ教は、ベトナム最大の新興宗教。タイニン省含むベトナム南部には、いくつもの新興宗教がありましたが、そのほとんどは時代とともに廃れていき、現在も活発に活動しているのはカオダイ教くらい。「宗教」と聞くと、少し怪しい感じがしますが、確かに怪しいです(笑)
今回紹介する総本山は、ホーチミン旅行では欠かせないツアー先の一つにもなっていて、すっかりと観光地化されています。行った先では、毎日定時で行われる礼拝の様子を見学することができます。
アクセス
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ホーチミンには電車がないので、遠方への移動はバスのみとなります。しかし、ローカルバスはベトナム語オンリーなので旅行者向けではありません。また、カオダイ教総本山では、礼拝を見学できますので、闇雲に個人で行っても、時間がずれていたら十分楽しむことができませんね。ここは確実にツアーがおすすめです。
ツアーでは、1日ツアーが定番で、抱き合わせで「クチトンネル」もしくは「メコンデルタ」へ行きます。どちらもホーチミン旅行で欠かせない郊外スポットなので、よく吟味してご参加ください。
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人口の7割がカオダイ教徒!
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カオダイ教の総本山があるタイニン省では、人口の実に7割がカオダイ教徒といわれています。ホーチミンに暮らしているベトナム人も、大抵一人か二人は親類にカオダイ教徒がいるほどです。もはや新興宗教とは言えないほどの定着具合です。
カオダイ教は1926年に発足。他の宗教と比べると歴史は浅いですが、それでも第一次インドシナ戦争、そしてベトナム戦争も経験しています。抗仏戦争時には独自の軍を持っていたことでも知られています。
先にタイニン省の人口の7割がカオダイ教徒と説明しましたが、しかしそのほとんどは年配の方。子供も多くいるのですが、青年になるとみなさんホーチミンに移り住みますので、結局過疎化が進んでしまいます。また、いまどきの若者らしく、「ださい」というイメージもあるようです。
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礼拝の時間近くになると、続々とシリ衣装を纏ったカオダイ教徒が本堂に集まってきます。新興宗教というと日本では薄気味悪いイメージがありますが、カオダイ教はかなりオープン。旅行者には手を振ってくれますし、礼拝の時間まで和気藹々と日陰で談笑しています。
5教を模範としたカオダイ教
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なにやら偉そうな年配の方々も集まってきました。一般の教徒は白い衣装に対して、彼らは赤、青、黄色といったカラフルな衣装です。彼らはこのカオダイ教でも特別偉い人たち。この色分けは彼らの前身の宗教によって決められています。
カオダイ教は仏教、キリスト教、イスラム教、儒教、道教の5教の教えを守っています。赤服は道教、黄服は仏教、青服はキリスト教が前身の人たちです。よくよくみると、明らかに道教が多く、次いで仏教となります。ベトナムでは道教が深く浸透していて、現在では仏教の一部のように扱われています。仏教寺院に行くと、道教の神、女神が祀られていることもしばしば。もちろんベトナム人の彼らは道教も仏教も区別していません。
礼拝までは敷地内を見学
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礼拝がはじまるまで本堂へ入ることはできません。これはカオダイ教徒も同じです。ですので、みなさん本堂脇の日陰で屈託のない談笑をしています。敷地はかなり広いですが、見どころとなる建物はないので、本堂周辺を散歩するくらいにしましょう。時間になると、偉い教徒(カラフルな衣装)から本堂の正門に入っていきます。この時間になると、一般の観光客は正門を横切ることはできなくなり、また、本堂内は靴を脱がなければなりません。
観光客は正門ではなく、横にある入口から入ることができますが、ツアー団体客も多いので、一列い並ばなければなりません。早めに並んでおきましょう。
礼拝を見学
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カオダイ教総本山本堂内部です。見学時は写真撮影はいいですが、フラッシュは禁止。もちろん土足もダメです。中に入ると、礼拝はすぐに始まります。中央奥にある球体。その真ん中に描かれている一つ目は「天眼」と呼ばれる、カオダイ教のシンボルマーク。心臓に近い左目とされ、宇宙の摂理を説くと言われています。
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本堂内は華々しい装飾があしらわれています。奥行きのある一階建ての空間にはカオダイ教徒が並んでいて、すべての支柱に龍が巻き付いています。
観光客は一階最後部、もしくは二階で見学することができます。
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礼拝が始まると、音楽、合唱に合わせて独特の読経がはじまります。仏教の礼拝とも、教会のミサとも異なる異色の空気が漂い、ここが異国の地であることを思い知らされます。カオダイ教は上述したように5教が合わさっていますので、崇める神も多数。釈迦やキリスト、ムハンマドはもとより、関羽、ソクラテス、ユーゴーといった哲学者、作家まで幅広く信仰します。
子供たちの歌声に耳を傾ける
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二階では、子供たちが弦楽器の音に合わせて合唱をしている様子を見学することができます。白い衣装にはちまきを巻いて、みなさん真面目な表情で一生懸命歌っています。
新興宗教は東南アジアのような発展途上国には多々あり、これといって珍しいわけではないのですが、実際一般の旅行者が触れ合う機会は早々ありません。特にツアーで堂々と行けるところはほとんどないので、貴重な機会だと思って、体験してみてはいかがでしょうか。
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