映画や小説で舞台になった町や名所を巡る旅行もいいものです。特に自分が好きで何度も見たような作品のロケ地に行ったら、自然と気分も高揚するものです。今回紹介するのは、ホーチミンを中心とした名作のロケ地となった場所。
有名な作品もありますので、一つでも多くの名所を回ってみてください。
ベトナムをロケ地にした作品は少ない?
ベトナムは最近でこそ対外政策に力を入れて寛容になりましたが、本質は社会主義国。外国人の自由はあまりありません。その中の一つが「撮影許可」。一昔前まで、外国人に対しての撮影許可は得ることができませんでした。
ベトナム戦争を舞台にした映画作品は多数あり、後世に残る名作映画も含まれています。しかし、実際撮影したのはベトナムではなくタイやフィリピン、マレーシアの離れ小島でした。「え?ベトナム戦争なのにベトナムで少しも撮影していないの?」と驚くことでしょうが、撮影当時、ベトナムはそのような閉鎖的な時代だったと思ってください。
ここで紹介しているのは、ベトナム(主にホーチミン)をロケ地にした作品です。現在も面影と名残りを感じることができるので、興味がある方は、一度作品を鑑賞したのち、ロケ地巡りにでかけてみてください。
小説「浮雲」の舞台は高原地帯ダラット
1951年に発行された作家・林芙美子氏の『浮雲』。ゆき子と富岡の二人の関係を描いた小説は、1955年には映画にもなりました。この浮雲では、主人公のゆき子が仏印へ渡るところからはじまりますが、仏印とはベトナム。フランス領だったころに、日本が進駐したことを言います。渡った先は中南部の高原地帯ダラットでした。
ダラットはベトナム人たちのハネムーン先として人気で、愛の都、恋人の聖地などと呼ばれています。ちなみに、同作品は映画化されましたが、舞台となるダラットでは撮影していないようで、代わりに伊豆でロケしたとのこと。やはり撮影許可問題があったのでしょう。
[local, 19]
「愛人/ラマン」ではチョロンが舞台に
1992年公開のイギリスとフランスの合作映画。華僑の青年とヒロインのフランス人女性との秘密の恋愛を描いた作品です。まだあどけなさが残る少女は
、学校が終わると青年の元へとかけつけます。青年が寝床としている場所は、中華街チョロンのサータイ市場。そこで何度も青年と少女は愛を囁きあいました。日本でも公開されましたが、過激な内容もあったため修正版が出されたほど。
フランスとイギリスでは当時ちょっとした話題となったため、現在でもロケ地巡りにやってくる欧米人が多くいます。
サータイ市場
サータイ市場(Xa Tay)はPhu Dong Thien Vuong通り沿いにある小さな青空市場です。早朝から日中にかけて野菜や生鮮食品が売られ、現地人で賑わっています。そのサータイ市場の一角にある古めかしい縦長住居。そこが華僑の青年が暮らしていた家となり、フランス人少女と愛をはぐくんでいた場所となります。作中では少女がサータイ市場の人込みをかきわけて青年の家に入るシーンがあります。
[local, 31]
「インドシナ」で利用されたコンチネンタルホテル
1992年公開。1930年代のフランス統治時代を描いた作品の一つで、当時は主演「カトリーヌ・ドヌーブ」ということで話題になり、この作品でアカデミー賞にノミネートされました。南ベトナム(サイゴン)を舞台に、フランス統治に対する独立運動真っ只中の状況を描いています。
作中ではカトリーヌ・ドヌーブがオープンカフェで佇むシーンがありますが、それはここコンチネンタルホテル外回りのカフェです。コンチネンタルホテルは格式高い4つ星ホテルで、当時の時代を映すコロニアル様式が特徴。現在でも各国のVIPや財界人がお忍びで訪れるホテルです。こちらのお店は、フランス料理を楽しめるカフェレストラン。自家製スイーツも人気で、カフェだけの利用も可能です。ドンコイ通りというメインストリート沿いに堂々と構え、市民劇場や白亜のユニオンスクエアなどを眺めながらコーヒーブレイクを満喫できます。
「地獄の黙示録」で見逃せないUH-01
米国発の軍用ヘリ「UH-01」。現在でも日本をはじめ、各国の軍隊が現役で活用していますが、主に活躍したのはベトナム戦争時。ベトナム戦争を題材にした映画は数多くありますが、その中でも「地獄の黙示録」は完成度が高く、また、UH-01の魅力を引き出しているとして、ミリオタの中では「UH-01の格好良さを知りたければ必ず見るべき」と言われているほど。
そのUH-01の機体を見学できるのは、ホーチミン市立博物館の敷地内、もしくは統一会堂です。いずれも日本人に人気の観光スポットです。ちなみに、同じくベトナム戦争を舞台にした「プラトーン」にもUH-01が登場。若き頃のチャーリーシーンとジョニーデップが乗っています。
また、両作品はすべてフィリピンで撮影が行われ、ベトナム戦争でありながらベトナムでは一切撮影していないという奇妙な出来事も語り草となっています。
[local, 149]
日越を繋ぐトラン・アン・ユイ監督
作家・村上春樹氏はベトナムでも絶大な支持を得ています。2010年に公開された実写版「ノルウェイの森」は、ベトナム人トラン・アン・ユイ氏が監督を務めました。彼は日本でも一時注目された「青いパパイヤの香り」や「シクロ」、「夏至」なども作り上げた世界で注目されている監督兼脚本家です。
今後はベトナムを題材にした日本の映画も増えるかも
2013年にはベトナムと日本が外交関係を樹立して40周年を迎え、2015年には「ベトナムの風に吹かれて」が松坂慶子さん主演で公開されました。今後はベトナムを舞台にした日本のドラマや映画が作成される機会も増えてくるかもしれません。そのときは、是非ロケ地巡りをしてみてください。ベトナムの魅力を肌で感じることができるでしょう。