メコンデルタ地方はホーチミン南西部に広がる一帯で、西側の町はカンボジアとの国境にも面しています。ホーチミンに住む半数以上はメコンデルタ地方から出てきたベトナム人と言われています。そのメコンデルタ地方は、日本人旅行客にとってはメコン川をボートで下るジャングルクルーズが人気。ホーチミン旅行客の大半はこのメコンツアーに参加することでしょう。
しかし、メコンデルタにはたくさんの町があり、いずれも旅行者は普段体験できない癒しの時間をおくることができます。今回は、その中でも旅行者におすすめの町を5つ紹介します。
1、ウェルカム・メコン。玄関口「ミトー&ベンチェー」
ジャングルクルーズが催行されているのは、ここミトー&ベンチェーの町です。ミトーはメコンデルタの玄関口といわれ、ホーチミンの町から90分で到着する最初の町。対してベンチェーはミトーの対岸にある町です。ジャングルクルーズはそのミトーとベンチェーの間にある小さな4つの島で行われます。どこの島に行くかはツアー催行会社によって異なりますが、その島ではココナッツキャンディー工場やローヤルゼリー工房などを見学することができます。
ミトーはホーチミンから近いことから、バックパッカー以外でもビギナー旅行者も気軽に訪れることができます。ただし、町の中心地は素朴な町並みは感じられるものの、目立った観光名所はありません。ゆえに、ミトーとベンチェーに訪れるのであれば、ツアーを介して上記のようなメコン川下りを楽しむのがおすすめです。
ちなみに、もし個人で訪れたとして、現地のホテルでメコンツアーに申し込むことは可能です。ただし、ガイドはすべて英語であったり、サービスの質もよくはありませんので、安心・安全のツアーに参加したければ、ホーチミンから申し込むことにしましょう。
2、日帰り水上市場「カイベー」
近年はカイベーの町への日帰りツアーが日本人の間で注目されています。カイベーの見どころは3つ。1つは早朝に開催される水上市場。ツアーで行くと昼前の見学になるので、それほど多くの商船は行き交っていませんが、船上で生活する人々や、水上に建つ家々といった河沿いの町ならではの風景を見ることができます。
2つ目は西洋風の邸宅。市街地のメコン川沿いに並ぶ邸宅は、富裕層が買い占めた別荘地。土地バブルが起きたころに、富裕層がこの一帯を買い占めてヴィラを建てました。現在ではそのヴィラの周りを見学することができます。
そして3つ目は、ホーチミンでは見られなくなった素朴な風景です。カイベーは小さな町で、まだまだ東南アジアらしい緑豊かな町並みが残っています。ホーチミンではあまり見られなくなったアオザイを着た学生も、ここでは毎日見ることができますし、都市部では廃れてしまったセーダップと呼ばれる三輪のオートリキシャもここでは健在。物品だけではなく、人を運びタクシー代わりとなって活躍しています。
ホテルは数少ないですが、探せば見つけることができるので個人で行くことも可能。ミトーからカイベー、もしくはホーチミンからカイベーと気軽に行けます。
3、メコンデルタ最大の都市「カントー」
水上市場はカイベーでも見学できますが、もともと外国人にメジャーなのはここカントー。カントーはメコンデルタ地方最大の都市であり、中心に位置しています。ホーチミンからバスで5時間強と少し離れているので、早朝がピークの水上市場を見学する場合は、現地で一泊して翌朝に行く必要があります。
カントー近郊ではいくつか水上市場が開催されるスポットがありますが、外国人が行きやすいのはカイラン水上市場。カントー市街地からタクシーで20分ほどで行くことができるエリアで、メコン川の川岸には大小のボートがとまっていて、小さなボートは船主と交渉して個人で連れて行ってもらうことができるほか、大きな観光船は受付でチケットを購入して乗ることができます。
水上市場以外の見どころとしては、カントーの市内散策がいいでしょう。カントーは大都市なので、ホーチミンとまではいきませんが、大型ショッピングセンターやインターナショナルホスピタルなどが建つ都会です。その一方、カントー川沿いは毎夜ナイトマーケットを楽しむことができるほか、外国人用のお土産市場であるカントー市場や、現地人の台所であるタンアン市場などが点在しています。
一泊二日で楽しむことができるカントー。ホテルはそれほど多くはないので、事前に予約しておくといいでしょう。
4、カンボジアとの国境。「チャウドック」
チャウドックはカンボジアとの国境に面しているメコンデルタの奥地。陸からでも川船からでもカンボジアの国境に行くことができる珍しいところで、手つかずの大自然がいまだ残されているとあって、癒しを求めにくる欧米人旅行者が多くいます。
町は中心に位置するチャウドック市場周辺が最も栄えていて、ツアーバス会社大手の「フンチャン」のチケット窓口もあります。ただし、宿泊できるホテルはなく、少し離れることになるでしょう。また、町から少し外れたところに聳えるサム山は仏教の聖地。この山の麓にある「ヌイサンロッジ」というホテルはビクトリア系列のラグジュアリーホテルで日本人にもおすすめです。
また、チャウドックには少数民族のチャム族が暮らしています。小舟で行くことができる対岸にはチャム人が暮らすダーフック村があり、延べ2千人以上のチャム人がいるといわれています。中南部に暮らすチャム族はヒンドゥー教を信仰していますが、チャウドックのチャム族はイスラム教。女性はスカーフを頭に巻いています。ダーフック村では彼女たちが作る民芸品をお土産に買うことができます。
5、ビーチに海鮮!理想郷「フーコック島」
ベトナムおよびメコンデルタ地方最西端に位置するフーコック島は、ホーチミンから空路で1時間で行くことができます。ただ、メコンデルタの町を回っているバックパッカーの方であれば、メコンデルタ奥地のハティエンの町から高速ボートでも行くことができます。
フーコック島はベトナム最大の小島でありながら、観光開発に着手したのはここ数年の出来事なので、まだまだ大自然に覆われた未開拓のエリアが残っています。旅行客は主に西部のロングビーチ、オンランビーチ沿いに広がる町を観光することができます。海水浴に町の探索など、東南アジアのリゾートらしい時間を味わうことができるでしょう。
ナイトマーケットだけではなく、ビーチ沿いの屋台やホテルレストランなど、どこでも新鮮なシーフード料理にありつくことができるのがリゾートアイランドの魅力。海鮮はそのほとんどが時価で、エビやカニは決して安くはありませんが、ホーチミンやハノイといった都心ではみることはけっしてできない大振りのサイズを食べることができます。
フーコック島はホーチミン観光と併せていくのがいいでしょう。もし滞在日数すべてフーコック島で過ごすのであれば、多少予算を多めにとってでも、バンガローやリゾートホテルといった高級ホテルに宿をとるのが、旅を満喫するコツとなります。ベトナムの宿泊費は世界的に見ても割安なので、諸外国と比べると、少ない予算で高級ホテルに宿泊できるのが魅力です。
メコンデルタの町を楽しむコツ
メコンデルタは町によって特色があり、それぞれに楽しみ方があります。水上市場やナイトマーケット、仏教寺院といった観光スポットを巡るのもいいですが、現地に暮らす何気ない彼らの生活の様子もしっかりと目に焼き付けておいてください。近年は交通インフラが発達してきたので、ビギナー旅行者でも気軽に訪れることができるようになりました。ホーチミン旅行者も一度個人でバス旅してみてはいかがでしょうか。