ベトナムに旅行に行かれる方は、事前にベトナムの現地情報をガイドブックやウェブサイトで収集していることでしょう。そこで、よく目にする「ベトナムは社会主義国」という文字、これを見て「日本とは何か勝手が違うのか」と疑問に思う方もいるでしょう。確かに日本とは政治体制が異なる様子。そこで、今回はベトナムをより深く知るという意味において、ベトナムの政治についてご紹介したいと思います。中には旅行中に肌で感じたり、実際目にしたり体験することもあるかもしれません。
知っておいて損はないベトナムの政治状況をお伝えしたいと思います。
① 社会主義国とはそもそも何?
まず知っておきたいのは、ベトナムの正式国号。国号は「ベトナム社会主義共和国」。いうなれば、社会主義は日本やアメリカ、他の国々とは対をなす政治体制です。日本は民主主義であり、資本主義経済。つまり、物事はみんなで決める。政府や警察は国民の生活をよくするための存在。一般的な土地など、個人の財産を認める。これが現状世界の流れです。
しかし、かの有名なマルクスが、「資本主義は貧富の差を広げるだけだ」と、財産などを集権することを提唱。このマルクスの政治理論を形にして、初めての社会主義体制を敷いたのがレーニン。レーニンの死後は社会主義の理念と理想を「マルクス・レーニン主義」と呼ぶようになり、これに賛同した国家もまた、社会主義国となりました。昔は20か国以上あった社会主義国も、現在2017年ではベトナム以外には中国とキューバ、ラオスくらいのもになりました。言論弾圧など国家権力が強く、いいイメージを持たない人も少なからずいますね。
② 日本とは異なる一党独裁制
まず、ベトナム社会主義国の政治は、共産党の一党独裁です。日本のように自民党や民進党、与党や野党といった競争政党はいません。これが最も疑問視される理由の一つです。国民によって選ばれる役人ではなく、すべてが内々で決められています。もちろんその中でも反対勢力などは存在しますが、基本は大は小を兼ねる。独断政権は国民との間で軋轢を呼び、国民が発起すると容赦なく弾圧する。なぜなら、政府の政策や理念は、理想の国家でなければならないというのが大前提だからです。
③ 政府転覆罪という重い罪がある
ベトナムの刑法79条には、「国家転覆罪」というものがあります。ちょっと怖いかもしれませんが、みなさんのような外国人旅行者にもしっかりと適用されるので、覚えておいてください。これはどの国にもあるのですが、社会主義であるベトナムは縛りがかなり強いです。簡単に言えば「公の場で政府を批判したらいけない」というもの。
例えば町中の公衆の面前でベトナムの政治の悪口を言ったりするのはダメ。また、フェイスブックや個人のHPなどSNSを介して批判するのはいけませんし、そのような団体を作ることも禁止されています。ベトナムでは毎年何人かのベトナム人が政府批判をしたり、集団を結束して逮捕されています。しかも、「捕まっても注意くらいでしょ?」という考えはあまく、懲役何年、何十年という重い罰が待っているので、軽はずみな行動で決して真似しないようにしてください。そこらへんは旅行者といえどもかなり容赦ないです。
④ ドイモイ政策以降、個人の財産を限定付きで認める
社会主義とは財産の管理を国営にて行うことでもあります。その方法が最も貧富の差がなくなると考えられているからです。真偽のほどは分かりませんが、それによって経済の活力は衰えることは否めません。もちろん外資を締め出すことでもあるので、外資も入りません。そこで1986年に提唱されたのが「ドイモイ政策」。他の国のような自由主義経済を取り入れたもので、制限付きで個人の財産を認めることとなりました。また、それに伴い民間企業の起業もできるようになり、さらに外資企業の経済参入も許容されるようになりました。
成果が出始めたのは90年代後半から。GDPと経済成長率も着々と上がり、韓国を筆頭に日本や台湾、アメリカ、ドイツ、フランスなどが相次いで経済に参入し、技術を提供したり、工場を作り、2000年代に入ると中国リスクを懸念した企業が東南アジアへと拠点を移すチャイナプラスワンの筆頭としてベトナムが挙げられるまでに至りました。現在では期限付き(50年)で土地やマンションなどの不動産を持つことも可能となり、経済にたいして大分自由になった印象を受けます。
⑤ 警察の力が強く、法律がころころ変わるのに注意
社会主義の特徴の一つとして、政府の権力が強いことが挙げられます。警察の力が日本よりも強いのは、旅行者も現地で実感するかもしれません。俗にいうネズミ捕りはもちろんのこと、外国人を呼び止めて何かしらの理由をつけて賄賂を要求するのも当たり前です。法律にのっとっていない事情で捕まったとしても、警察と喧嘩してはいけませんし、日本のようにつっかかるなんてとんでもないことです。大人しく従いましょう。
また、新興国のベトナムでは法律もころころと変わります。旅行者が影響を受けるのはビザ(査証)に関して。ベトナムに入国する際の滞在ビザの法律もしょっちゅう変わります。ただ、短期旅行15日以内であればビザは必要ないので、多くの旅行者はさほど気にする必要はありません。影響を受けるのは複数か国周遊する旅行者と中長期滞在者、そして在住者です。
ベトナムの政治事情をよく知り、トラブルのない観光を
「そんな事情知らなかった」では済まされないので、トラブルを回避する最も有効な手段は「トラブルを知ること」からはじまります。ここで紹介した幾つかの問題は旅行者にも直接影響を受けることもあるので、事前に知っておき、さらなら情報収集や回避策を練っておくのがおすすめです。
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