アンコールワットより少し北上した場所に位置するアンコールトムは、ワットと並ぶ2大世界遺産遺跡群。ワットと異なり、トムは複数の遺跡から構成されていて、周囲約12kmの城壁に囲まれた神聖なエリア。今回紹介する「バイヨン」は、アンコール建築の神髄、最高峰と呼ばれて、その建築技術や優美さはアンコールワット以上とも囁かれています。
今回は四面仏がその象徴のアンコールトムの遺跡「バイヨン」をお届けします。
アクセス
バイヨンのあるアンコールトムは、ワットの北上に位置しています。パブストリートなどのある市街地からトゥクトゥクで20分弱。こちらもアンコール遺跡の入場券で入ることができるので、チケットを改めて買う必要はありません。多くの旅行者は1日かけてアンコール遺跡群を見学することになりますので、1日券=37ドルは十分に払う価値があるかと思います。ただし、アンコールワットだけだといささかもったいないので、少なくともアンコールワットとトム2か所は回るようにしましょう。所要時間は朝から両方見学して15時頃に見学終了といった形です。
[local, 471]バイヨンの概要
ジャヤーヴァルマン7世が12世紀末に建築した仏教とヒンドゥー教の混在した寺院。ジャヤーヴァルマン7世はこれだけではなく、アンコールトムの遺跡群の多くを建築していることから、建築王とも呼ばれ、また、最もアンコール王朝が栄華を極めた時期ともなります。大きな四面仏を持つ四面塔にその頂上に蓮を持っているのが特徴で、現在ではその独自性から「バイヨン様式」と呼ばれるに至っています。
バイヨンは中央祠堂を中心に第1~第3までの回廊があり、要所にはヒンズー教の象徴でもあるヨニやリンガ、レリーフが配置。アンコールワットと比べると、優美で緻密。王の宗教観も異なり、ヒンズー教から仏教へと切り替わる節目でもあったようです。
ガイドブックを見ると、大回りから第一回廊がはじまり、中心へ行くごとに第2、第3へと表記が変わっていきますが、実際は作られたのは中央祠堂が最初なので表記も逆のはず。一番中央祠堂よりの回廊(内側)が第1回廊であったはずと言われています。ツアーガイドによってはそのように説明されて、ガイドブックとは回廊の順番が逆になることもあります。
必見のレリーフはチャンパとの抗戦の様子も
大きな壁画に描かれているレリーフ。クメール建築では決まって見られ、アンコールワットにも美しい宗教観が描かれています。しかし、バイヨンにある壁画はどちらかというと、当時の人々の生活の様子であったり、史実の一コマが多く見受けられます。ここでも王による見解の相違がうかがえるから興味深いです。
この時期、隣国であるベトナム中南部に栄えた海洋国家チャンパ王国が、侵略のためアンコールトムに侵入します。激しい抗争が繰り広げられ、その結果勝利をおさめチャンパを撃退。さらに後方の壁画には中国人軍隊や水牛、蓮の上で踊るアプサラの巫女、バラモン僧などさまざまなレリーフをみることができます。
美しい四面仏
四面にはそれぞれ仏の顔が。微笑していることから"クメールの微笑み"と呼ばれています。精巧な建築技術がうかがえ、アンコールの全遺跡群の中で最も興味深く、見ごたえがあるという学者もいるほど。四面仏の前で写真撮影できるスポットもあります。また、象によじ登ったりするのは禁止されています。観光客の中には写真撮影のためにロープをくぐる人もいますが、くれぐれもそのようなマナー違反はしないようお願いします。
遺跡巡りを楽しむポイント
バイヨン見学はアンコールトムの最初に行われます。その後アンコールトム内に散らばるバプーオンや王宮、ピミアナカス、象のテラスなどを歩いてみて回るので、水分補給しつつ、日焼け対策も忘れないようにしてください。
[local, 531, 532]また、事前にその遺跡の歴史拝見を調べておくのも肝心。その遺跡がいつ頃できたのか。ヒンズー教なのか仏教なのか。主な見どころはどこなのかくらいはガイドブックにも掲載されているので、飛行機の中やホテルで一読しておくといいでしょう。また、個人で行く場合は自由に遺跡内を巡ることができるので、ガイドブックでマップを確認しつつ、一通り見て回るようにしてください。特にバイヨンやワットといった大きな遺跡はガイドブックにも載っていない自分だけの新たな発見を数多くすることができるはずです。
<DATA>
名称:バイヨン(Bayon)
場所:アンコールトム内
創建:12世紀末
宗教:仏教、ヒンズー教