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フランスが作った悲しき遺物「ホアロー収容所」

今回紹介する「ホアロー収容所」は、アメリカCNNで「東南アジアで最も恐ろしい観光スポット」にも選ばれたことがある、ベトナムの歴史が生んだ悲劇の産物。19世紀末にフランスが造った収容所で、ベトナム人を投獄するために設置されました。ハノイ市中心に建ち、どこか寂しげで希薄な存在感を漂わせるホアロー収容所をご紹介したいと思います。

アクセス

IMG_9602.jpgホアローは通りの名前

行き方は、タクシーに乗るのが早いです。ベトナムの観光スポットは広範囲に散らばっているのが特徴で、それぞれ徒歩で行こうとすると、かなり体力が必要です。あまりに近いと乗車拒否されることもありますが、旧市街、ホーチミン廟周辺であれば、迷わずタクシーで行き、ホアンキエム湖周辺は北部(水上人形劇付近)であればタクシーで、それより以南であれば徒歩を検討してもいいかもしれません。ちょっと高くつきますが、シクロで行くのも可。

内部へ潜入

IMG_9662.jpg不思議と殺伐とした空気を感じる

高い塀に静かな回廊は、ここだけですべてを完結させる仕組みのように感じます。凛とした空気が流れ、どこからか不気味な人影が出てくるのではと本気で感じてしまうほどです。受付でチケットを購入したら、敷地内に入ることができます。道順を示す標識は一応はありますが、どこの場所から見学してもかまわないので、人が空いているところから見て回るのがおすすめです。よく中国やフランスのツアーの団体客が来るので、ゆっくりと見学できないときもありますので。

何気ない瓦礫の穴の正体は......

IMG_9655.jpgベトナム人囚人の懸命に生きる瞬間を感じられる

敷地内外回りに置いてある何気ない瓦礫。中は空洞になっていて、小柄の人一人がなんとか抜けられるくらいの小さな穴です。実は、こちらはベトナム人の囚人が脱走用に掘った穴。小柄な体格のベトナム人だからこそできたプリズンブレイクと言えるでしょう。

収容所内部へ

IMG_9680.jpg当時囚人が使っていた調度品などが展示されている

建物内部には模型エリアと展示品エリア、そしてお土産コーナーで構成されています。展示品は主に囚人が使っていた食器や衣類などが主で、人間として扱われていたとは思えないものです。

IMG_9683.jpgマグカップといえば聞こえはいいが......

写真上の無機質なアルミの器と箸は、囚人の使っていた食器です。主に水を飲むために使われていたようです。これだけ見ても、ベトナム人の囚人がフランス軍にどのように扱われていたのか察することができます。

IMG_9689.jpgバケツに食べ物を入れ、配膳されたのであろう

囚人が主に食べていたのは空芯菜のおひたしや大豆のペースト、干し魚など。日曜日は特別にお肉が出ていたみたいですが、それも古びた豚肉や固い水牛肉で決しておいしいとは言い難い味でした。料理はほぼ水分のみで、水腫を引き起こしたり、浮しゅ性などで、多い時にはひと月に40人以上の囚人が死んだときもありました。

IMG_9619.jpg当時のホアロー収容所。外観はさほど変わりない

抗仏戦争でもっとも知名度が高いディエンビエンフーの戦い。1954年に起こり、2か月で終幕したものの、インドシナ戦争中最大規模の戦闘となりました。その時にも多くの囚人がここに投獄され、最も多いときで2000人以上が収容されていたと記録されています。ちなみに、この収容所は前述したとおり、フランス軍がインドシナ時代に造ったベトナム人捕虜の監獄。しかし、南北統一をかけたベトナム戦争時にも、南ベトナム軍人を収容していたとされてます。

リアルな空気が伝わる模型エリア

IMG_9666.jpgリアルな模型。何かを訴えているようでもある

集団房のエリアでは、台座に座った囚人たちの生気のない姿が。全員足枷をはめられていて、中にはフランス軍にたてつくような眼光の囚人や、体力を失い倒れつつある主人の様子までリアルに再現されています。

IMG_9715.jpg当時の様子を収めた貴重な写真

こちらが当時の写真。20人以上の囚人が横並びで座っています。ここで過酷な生活を何年も強いられていたと思うと、やるせない気持ちになります。

独居房

IMG_9727.jpgひんやりとしたドアの向こうには......

独房は光がなく、真っ暗闇の狭い空間。格子が嵌められた小さな窓がすべてで、その奥には囚人や政治犯が投獄されています。ちなみに、格子越しに中をのぞくと......是非その目で確かめてみてください。

ギロチン台

IMG_9747.jpg研ぎ澄まされた刃が鈍く光っている

そして観光客から注目を集めているのが、こちらのギロチン台。

主に政治犯を処刑するときに使われました。ギロチンはもともとフランスが発祥の死刑台です。つまりフランス植民地のときにギロチンによる処刑方法がベトナムに伝えられたということです。フランス軍もベトナムの囚人に対してギロチンで処刑をしていたと思われています。

一度は訪れてほしいホアロー収容所

見学してテンションが上がるような観光スポットではありませんが、ベトナムの歴史に残る忌まわしき時代の産物を、この目で見ておいて損はありません。ベトナムといえば南北ベトナムと米軍参加によるベトナム戦争が真っ先に思い浮かびますが、その前のフランス統治時代と抗仏戦争は、第一次インドシナ戦争と呼ばれており、のちのベトナム戦争が第二次インドシナ戦争と呼ばれていたりもします。歴史はすべてが線で繋がっているので、ベトナムを少しでも深く知りたいと感じた方は、こちらに立ち寄ってみてください。

<DATA>

名称:ホアロー収容所(Nha Tu Hoa Lo)
住所:1 Hoa Lo St. Ha Noi
電話番号:04-3934-2253

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著者プロフィール

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ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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