チャンパ王国は2世紀から19世紀まで、ベトナムの中部から中南部に栄えた海洋国家です。分断国家だったベトナムでは、チャンパ王国や阮朝といった独立政権を築く国家がいくつかあり、その内の一つです。ただし、チャンパ王国はベトナムのどの文化とも似つかない文化を持っていました。その文化や慣習を紐解く上で欠かせないのが、1999年に世界遺産に登録されたミーソン遺跡。そして、ミーソン遺跡含む中部地方で発掘されたチャンパ王国の遺産を展示しているのが、今回紹介する「チャム彫刻博物館」となります。非常に貴重な遺産が眠っているので、是非おすすめしたい観光スポットとなります。
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徒歩圏内の好立地
チャム彫刻博物館は、ダナン大聖堂から南へ進んだところにあります。徒歩だと10分程度の距離なので、タクシーを使う必要もありません。また、タクシーだとワンメーターで行けるでしょう。博物館周辺はツアーバスやシクロが停まっていて、すっかりと観光エリアになっています。帰りはシクロで市街地中心まで散歩するのもいいかもしれませんね。
入口で入場料を払って奥へ進むと、学校の校舎のようなコの字の2階建ての建物があります。入口は左右正面とあり、どこから入っても道に迷ったりすることはありません。
建物内部を紹介!
内部は写真上のように、貴重なチャンパ王国の遺産の数々が廊下の随所に展示されています。「こんな管理方法でいいの?」と思ってしまいますが、これもベトナム流のようですね。
ヒンドゥー教信仰
チャンパ王国はベトナムではこれまでなかったヒンドゥー教シヴァ派を信仰していました。ゆえに、チャンパ王国の民は、カンボジアやインドから渡ってきたのではないかと推測することができます。
ベトナム戦争による被害
ヒンドゥー教の遺跡の注目すべき点は、信仰するヒンドゥーの神々の彫像。そして、緻密かつ美しいレリーフです。しかし、そのすべてが原型をとどめているわけではなく、出土した当初から腐敗していたり、発掘後に一部分だけ盗難に遭ったりすることも多々あります。
特にベトナム中部は、ベトナム戦争の激戦区でも知られており、ミーソン遺跡をはじめ、各地のチャンパ王国の聖域も多大な被害を被りました。貴重な彫像も爆撃によって破壊され、名称不詳となる像もしばしば見受けられます。非常に残念ですね。
ミーソン遺跡の発掘過程、そして、出土したときの写真などを展示しているエリアもあります。ミーソン遺跡はまだ発掘調査段階で、いまだ雑木林に埋もれている遺跡もあるようです。年々一般観光客が見学できるエリアも増えてきています。
チャンパ王国と日本の関係
チャンパ王国は現在沖縄、当時琉球王国とも通好関係がありました。また、徳川家康公の時代には、朱印船をチャンパ王国に向けて派遣し、交易をしていたともされています。意外なところでベトナムと日本の関係が垣間見えますね。
チャンパ王国の子孫
ベトナム最大の少数民族であるチャム族は、チャンパ王国の直接の子孫と言われています。現在チャム族はベトナム中部から中南部、メコンデルタのチャウドックに存続しています。チャンパ王国の遺跡では、しばしば観光客向けにチャム族による民族舞踊を鑑賞することができます。
あくまでも可能性
実は、チャム族がチャンパ王国の子孫だというのは、あくまでも過程の域となります。その理由はいくつあり、いずれもチャム族とチャンパ王国を決定づける証拠がないことが挙げられます。
また、チャンパ王国は主に碑文として歴史を文字にしていますが、現在は風化、劣化してしまい、文字を読み解くことが困難のほか、解読する研究者が少ないことも要因にあります。
堂々と構えているこちらの像は、言わずと知れたシヴァ神。破壊の神であり、ヒンドゥー教三大神の一人です。ゲームや漫画でもお馴染みの最高神ですね。
こちらもヒンドゥー教でお馴染みのリンガ。シヴァ神の男性器となります。ペニス=子を産む=万物の神としてもシヴァ神は崇められていて、女性がリンガに触ると妊娠するという言い伝えもあり、妊娠を望む女性がご利益を得るためにリンガを祀る祠堂に行くこともしばしばあります。
ちなみに、リンガと併せてヨニと呼ばれる女性器もあります。こちらはシヴァ神の妻であるパールバティーの性器と言い伝えられています。
頭がゾウ、体が人といえば......
学問や商業の神として信仰されているガネーシャ像。人間の体とゾウの頭を持っている、あまりにも有名な神ですね。ガネーシャは前述したシヴァ神とパールバティーの子供です。
シヴァ神は、パールバティーの浴室への入室を拒んだガネーシャの頭を切り落としてしまいます。それに激昂したパールバティーをなだめるため、シヴァ神は頭を探しに行きます。しかし、うまく合う頭がないので、仕方なくゾウの頭を付けてめでたしとしたと言われています。
神の鳥「ガルーダ」。アニメやゲームでは敵として出てくることが多いですが、実は三大神ヴィシュヌ神の乗り物です。
一階奥にはお土産コーナーが常設しており、ベトナムの定番土産からヒンドゥー教の神を模した置物などが販売しています。ダナン市内にはあまりお土産物屋がないので、買いそびれることのないよう、ここで一通り揃えるのもいいでしょう。
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名称:チャム彫刻博物館
住所:2 9/2 St. Da Nang
営業時間:7:00〜10:30、14:00〜17:00