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ワットよりも大きい!古の巨大都市「アンコールトム」

一辺が3kmにわたって続く巨大な敷地を持つ「アンコールトム」。世界遺産アンコール遺跡群の中でも最も大きな規模を持つ遺跡のことから、アンコールワットを「小アンコール」、アンコールトムを「大アンコール」などと現地人は呼びます。今回紹介するのは、そのアンコールトムの概要から中で見学できる遺跡までをご紹介。

アクセス

アンコールトムの入り口

アンコールトムはワットよりさらに北上した場所に位置しています。市街地からトゥクトゥクや車で20分程度で行くことができます。アンコールワットでも共通の遺跡入場券で入ることができますので、予めチケット売り場で購入するようにしてください。

ツアー参加と個人の違い

バイヨンへの入り口そば。阿修羅と仏像が並ぶ

ツアーに参加する場合は旅行会社によって多少は違うかもしれませんが、「バイヨン」からはじまり、「バプーオン」、「ピミアナカス」、「王宮」、「象のテラス」、「ライ王のテラス」の6つを歩いて回ることになります。半日ツアーでは午前中もしくは午後のみ、1日ツアーではもう半日使ってアンコールワットも見学するのがオーソドックスです。短期滞在者は時間に余裕がないので、1日使ってまとめて見て回るのもいいかもしれませんが、1日通して遺跡巡りをすると、かなりくたくたになります。また、日差しが強く日によっては40度に達することもありますので、熱中症や紫外線対策はもちろん、できれば日をずらすのがおすすめです。

象乗り場

巨大な象に乗ってアジアン気分を満喫

バイヨン遺跡のすぐ手前にあるアトラクション。タイと同様象が町のシンボルとなっているカンボジア。アンコールトムが栄えていた当時から象は人々と共に生きて、戦士たちは象に乗って狩りに出ていたとも言われています。

バイヨン

四面に顔を持つ塔

最初に訪れるバイヨンはアンコールトム遺跡内の最大の名所。アンコールワットと比べても決して見劣りしない荘厳な景色を見ることができます。チャンパ王国の侵攻や人々の生活の様子を壁のレリーフに写し、第1~3回廊まであるバイヨンは建築王と言われたジャヤヴァルマン7世の最高傑作とされています。

<DATA>

名称:バイヨン(Bayon)
場所:都城中央(全体の南方)
創建:12世紀末
宗教:仏教、ヒンズー教

バプーオン

隠し子伝説が眠る

バイヨンを北上すると、西方のバプーオンに続く200mほどの参道があります。かつては両側に聖池が参道と同じ水位まで溜まっていて、水上を歩いているような空中参道であったといわれています。ジャワ侵攻の隠し子伝説もあり、何かと興味深い寺院。厳密に何のために建造されたかは分かっていないというのも、またミステリアスな魅力の一つ。

<DATA>

名称:バプーオン
場所:バイヨンから歩いて北上
創建:11世紀中頃
宗教:ヒンズー教

ピミアナカス

王宮の正面に位置している迫力ある寺院

王宮の周壁内にある三層のラテライト基壇を積み重ねた背の高い寺院。かつては中央にさらに塔が立っていたらしいのですが、倒壊して現在はありません。クメール王と妖艶のナーギー(ヘビ)の伝説が眠る神話的な寺院です。

<DATA>

名称:ピミアナカス
場所:バプーオンから北に歩くと正面右側にピミアナカス、左側に王宮跡地が見えてくる
創建:11世紀初頭
宗教:ヒンズー教

王宮

女池と呼ばれる聖なる池

歴代クメールの王が住んでいたとされる王宮は、現在では茂みに覆われて、その面影を見ることは叶いません。王宮跡地の傍には、かつてクメール王や王族の女性たちが入浴していたとされる池が2つあり、それぞれ男池、女池と名付けられています。なかなか当時の様子を思い浮かべるのは難しいですが、伝説の残るバプーオンやピミアナカスといった寺院を歩き、美しい池に歴史を映してみてはいかがでしょうか。

<DATA>

名称:王宮(跡地)
場所:ピミアナカスの奥。周壁内部
創建:10世紀末
宗教:ヒンズー教

象のテラス

三体の象は躍動感がある

ジャヤヴァルマン7世が建造したテラス。クメール王や王族たちがこのテラスに上がって、整列している兵士たちの閲兵をしていたと言われています。神々のレリーフがうかがえる一方、力強い象の彫刻も迫力があります。当時から象は特別な動物として扱われていたことが見て取れます。

<DATA>

名称:象のテラス
場所:王宮の周壁外。ピミアナカスの手前、北大門へと続く中央道沿い
創建:12世紀末
宗教:ヒンズー教

ライ王のテラス

高さは6mもある

象のテラス横にあるライ王のテラス。高さ6mある壁にはびっしりと彫刻が刻まれていて美観。間近まで行くと、まるで巨大な壁が立ちはだかるような迫力があります。迷路のような入り組んだ石塀が築かれていて、テラスの上にはライ王の像が安置されています。ただしこちらはレプリカ。この像は一説にはクメールの王ではなく、閻魔大王ではないかとも囁かれています。

<DATA>

名称:ライ王のテラス
場所:象のテラスの横
創建:12世紀末
宗教:ヒンズー教

クリアン

勝利の門へ向かう道中、東方にある南北の遺跡。破損個所が多く、天井もありませんが壁に連なる連子窓や彫刻の像など見ごたえは十分。ただし、この遺跡はおおよその建造年代は分かっているものの、何のために造られたのかはいまだ不明。一説には単なる倉庫であったとも言われていますし、また宮殿の一部の施設とも、外国人を招いたときの客室であったとも言われています。

<DATA>

名称:クリアン
場所:象のテラス正面。東にある勝利の門へ向かう道中
創建:11世紀初頭
宗教:ヒンズー教

プラサット・スゥル・プラット

王宮の向こう正面に位置し、象のテラスと並行して築かれた12の塔。別名「綱渡りの塔」とも呼ばれていて、その由来は当時塔と塔を綱でつないで、歩いて渡る大道芸を観客のために見せていたことに由来していますが、実際そのような催し物があったかどうかは不明。また、別の学者によっては、この塔はその者の善悪を見定める神明裁判の場所であったのではとも言われています。

<DATA>

名称:プラサット・スゥル・プラット
場所:象のテラス正面の道路の向こう。並行して並ぶ12の塔
創建:12世紀末
宗教:仏教

プリア・ピトゥ

2つのテラスと5つの聖殿で構成されている寺院。仏教とヒンズー教二つの顔を併せ持つアンコール遺跡ならではの風情が漂う美しい外観。第3聖殿傍には2頭の象が立っていて、通常この位置にはライオンやトヴァーラーパラのような門を守る神が立つため、当時象はかなり格式の高い動物であったことが分かります。当時はアンコールトム遺跡内のテラスで最も美しいとされていましたが、現在は破損が多いのが残念。

<DATA>

名称:プリア・ピトゥ
場所:プラサット・スゥル・プラットおよび北クリアンを北上したすぐ
創建:12世紀初頭
宗教:仏教

テップ・プラナム/プリア・パリライ

周囲がのどかな茂みと林に覆われている遺跡。全長75mのラテライトで作られた基壇があり、その奥には高さ4mほどの大きな大仏が鎮座しています。テッププラナムの建造年代は10世紀初頭で、このころはヒンズー教崇拝でしたが、のちに仏教崇拝へと移り変わったため、この大仏が造られたという説が通説。

また、テップ・プラナムの奥にあるのがプリア・パリライ。茂みに覆われて分かりづらいですが、テラス、塔門、中央祠堂がそれぞれ見て分かります。建造年代は12世紀初頭でジャヤヴァルマン7世のものと思われますが、詳細は不明。中央祠堂にはヒンズー神話でも有名なカーラやインドラの彫刻があります。

<DATA>

名称:テップ・プラナム
場所:王宮およびライ王のテラスの北側
創建:10世紀初頭
宗教:ヒンズー教

名称:プリア・パリライ
場所:テップ・プラナムを越えた西方奥。
創建:12世紀初頭
宗教:ヒンズー教

魅惑のアンコールトム

これより北側に進むと、北大門の出口があり、アンコールトムの観光は終了。上述したように、通常ツアーではこれらすべてを見て回ることはありませんので、もしすべての散策を望むのであれば、個人で行くことをおすすめします。観光の所要時間は約半日。事前に各遺跡の場所をしっかりと把握しておくことが肝要です。

著者プロフィール

ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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