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アンコールトムに築かれた王宮。「王宮」、「象のテラス」、「ライ王のテラス」

数多くの遺跡群から構成されるアンコールトムは、かつては巨大な王宮でした。外国人にとっては言わずもがなの世界遺産はアンコールワットですが、現地人からすると、アンコールワットは「小アンコール」、アンコールトムは「大アンコール」と呼ぶ人も多くいます。今回紹介するのはその中でもジャヤヴァルマン5世が建造した「王宮」と、7世が建造した「象のテラス」、「ライ王のテラス」をご案内します。

アクセス

アンコールトム内の北部に位置する遺跡。中央に象徴となるバイヨンが聳え、そこから歩いてバプーオン、ピミアナカスと見学します。王宮跡地はピミアナカスの奥で、象のテラスとライ王のテラスは周壁の外に造られています。ツアーに参加した場合は、象とライ王のテラスの見学でアンコールトムは終了となることが多いので、最後の体力を絞って臨みましょう。ちなみに個人で行く場合は、そのさらに北に歩いたところにあるテッププラナムも見学するといいでしょう。

かつて歴代の王が鎮座した「王宮」

かつての王宮の見る影はほとんどない

ジャヤヴァルマン5世の10世紀末に建立されたとされている王宮。歴代の王が鎮座したとされる王宮の跡地となります。現在は東西600m、南北300mの周壁と「男池」、「女池」があるのみと、当時の王宮の面影は一切残っていません。当時建てられた王宮のほとんどが木造だったため、ジャワ(現在のタイ)侵攻のときに焼失してしまったとされています。王宮跡地は現在では芝や木々に覆われていて見る影がありませんが、周辺には陶器の破片や瓦などが散らばっています。ただし、こちらはすべて文化財の一端なので、手を触れたり持ち帰ったりすることはできません。

女池

王宮傍には男池と女池があり、当時のプールや沐浴のような役割を担っていたといわれていいます。いずれも王族のみ入ることを許されていました。特徴は規模と彫刻。彫刻はいずれもバイヨン様式で美しい彫刻が壁に刻まれています。また、規模は男池が小さく、女池が広く、さらに彫刻も多々発見することができます。これは当時妃の力が非常に強かったことを証明しています。かつての歴代クメールの王たちがどのような生活をしていたのかを想像しながら池を歩き、ピミアナカスに伝わるナーギー(蛇)の伝説を想いながら見学してみてください。

<DATA>

名称:王宮(跡地)
場所:アンコールトム内
創建:10世紀末
宗教:ヒンズー教

王の閲兵で利用された「象のテラス」

3体の象と多数のガルーダが見て取れる

王宮の周壁の外に造られた象のテラスはジャヤヴァルマン7世の時代に造られました。高さは約3~4mほどで、長さは300m以上に及ぶ長いテラスは、当時クメールの王族たちがここに鎮座して整列した兵たちを検閲、いわゆる閲兵をしていたとされています。単なる石の塀ではなく、壁には緻密かつ美しい彫刻が300mの壁すべてにほどこされているのが特徴。名称にもなっている3体の象も見て取ることができ、正面に回ると象の額、目、長い鼻を見学することができます。

ヒンズー神話でお馴染みのガルーダの像

像の他にもレリーフは幾多もあり、乗馬して戦をしている兵や剣を携えている兵、神の遣いとされる5つの頭を持つ馬に子供、ガルーダにガシャシンハといった彫刻が施されています。ガシャシンハとはガルーダとライオンが一体化した聖獣で、その2体が交互に並んで王のテラスを支えています。

ヴィシュヌ神か......

ジャヤヴァルマン7世の建立当時はこれほど長くはなかったとされ、その次の8世のときに現在の長さに改修されたと言われています。ツアーではこのテラスにそれほど多くの時間を割くことはなく、王宮から出て右手にある3体の象とテラス、左手のライ王のテラスを見学してツアーは終了となります。もし時間が取れた場合や個人で向かった場合は、さらに南へ歩き一通りレリーフを見学するといいでしょう。順番は3体の象、象、ガルーダとガシャシンハの像、そしてふたたび象と続きます。

<DATA>

名称:象のテラス
場所:アンコールトム内
創建:12世紀末
宗教:ヒンズー教

三島由紀夫作品のモデル「ライ王のテラス」

緻密なレリーフは象のテラス以上

最後はライ王のテラス。作家・三島由紀夫氏の戯曲にも登場したことで知られるライ王ですが、このテラスの建造意図は明確には分かっておらず、またライ王が何を指し示すのかも不明となっている曰くつきのテラス。その一方でテラスの壁には非常に数多く緻密の阿修羅と神々の彫刻が連なっていて見ごたえがあります。高さは約6メートルほどあり、象のテラスよりも高難度の設計であることが見て取れます。

修復が完成したのは1996年と比較的新しい

なぜライ王のテラスと呼ばれるようになったかは諸説あり、有力なのは歴代クメール王の中にライ病を患っていた人がいたからという説です。また、傍にある仏陀は当時のクメールの王であるジャヤヴァルマン7世、もしくは仏陀、もしくはその両方という説が有力ですが、別の見解ではひげと牙があるため、閻魔大王ではないかともいわれています。ちなみに、こちらの像はレプリカで、本物はプノンペンの国立博物館に安置されています。

<DATA>

名称:ライ王のテラス
場所:アンコールトム内
創建:12世紀末
宗教:ヒンズー教

著者プロフィール

ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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