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何度来ても新しい発見。世界遺産「アンコールワット」

カンボジア旅行といえば、まず必ず訪れるのが世界遺産「アンコールワット」。年間300万人以上の観光客が訪れるアジアの象徴。シェムリアップの世界遺産は、正確にはこのワットだけではなく、周辺の遺跡を含めた「アンコール遺跡群」となるのですが、ガイドブックでクローズアップされるのは、やはりこのワット。

今回は世界遺産「アンコールワット」をご紹介します。

アクセス

中央祠堂へ上がる行列

アンコールワットはシェムリアップの市内中心部。パブストリートやオールドマーケットから車で15分程度で行くことができます。入場券はここではなく、別に設けられた施設で購入することになります。フリーパスはアンコールワットだけではなく、アンコールトムやロリュオス遺跡など他のアンコール遺跡群にも利用することができるため、ワットの見学が終わっても捨てないようにしましょう。

天空の楽園「アンコールワット」

アンコールワットの魅惑の世界に入り込む

アンコールワットの正面となるこちらは西参道と呼ばれる通路。左右は芝が広がる環濠となっていて、聖池という溜池があります。その溜池に映るワットは、しばしば「逆さアンコールワット」とよばれ、ガイドブックでも紹介されていますね。また、朝日鑑賞をする場合もこのエリアで鑑賞するのが定番。これより奥への入場は早朝はできません。朝日鑑賞をされたあとは、一度ホテルに戻って休憩し、時間をおいて再び訪れるのが定番となっています。

緻密な建築美学を感じることができる

アンコールワットが建造されたのは12世紀初頭。時の王はスールヤヴァルマン2世。南北約1300m、東西約1500mという広い敷地を持ち、第1~第3回廊の高い塀によって囲まれ、その中心には中央祠堂が佇んでいます。建築学的にも配慮された点を数多く見受けることができ、5つ横並びにある塔は見る場所によって数が変わります。また、単なる建築様式ではなく、天文学要素も含まれているのも特徴。

第1~第3回廊まで望むことができる

アンコールワットは一般的にはヴィシュヌ神を祀った宗教神殿であるといわれています。そのヴィシュヌ神は太陽の神であり、ワットと太陽は強く結びついていることも分かります。ワットは他の神殿が東向きに造られているのに対し、正確に西を向いています。これはワットが太陽を象徴とした神殿であることを示し、宗教的に重要な日となる秋分と春分(昼夜の時間が等しくなる)にワットの中央祠堂の塔の中心に太陽が昇るよう設計されています。また、ワットの最大の見どころでもある壁画のレリーフにも建築要素が見て取れ、そのレリーフの物語・伝説の内容に則して光の差し込み加減が調整されています。

仏教徒にも支持されている

外国人観光客にも人気

アンコールワットはヒンズー教の神殿として建てられました。のちにカンボジアは仏教国に移り変わるのですが、現在では仏教の僧侶にとって、このアンコールワットは聖地としてみなされています。ヒンズー教から仏教への変遷、それでいてヒンズーの中に仏教を垣間見ることができるのは大変貴重でありユニーク。

ワットが公式に発見されるより前に日本人が訪問

墨書の落書き

アンコールワットが日を浴びたのは1860年。フランス人のアンリ・ムオー氏が森林を探索中に見つけたことによって、公式に知られるようになりました。しかし、実はそれ以前から知る人ぞ知る場所であったらしいことが分かります。1633年、ムオー氏がワットを発見する200年以上前にここに訪れたのが、日本人の森本右近太夫一房。その時の壁に落書きした墨書は現在でも残っています。

フレームになる空間構成

これだけの美空間。決して偶然とは思えない

祠堂内外の開口部には要所で御覧のような光景をうかがえます。まるで開口部がフレームとなって、その先にある景色を切り取っているかのような絶妙な角度。例えば西塔門の石段を上がった開口部には、ワットの中央祠堂の塔だけがぽっかりと切り取られてみることができます。このような空間構成はワット建築の美を追求するものであり、当時の建築造形技術の一端を垣間見ることができるとあって、大変興味深いものがあります。

神々や当時のデバター、アプサラスを映す

当時の女性の「美」の法則もうかがえる

冠をかぶり、豊満な胸と細いくびれを持つデバターのレリーフ。デバターは女神を意味し、壁のいたるところにこのデバターの像が刻まれています。このデバターはワットだけではなく、世界遺産に指定されているアンコール遺跡群のどこでも見ることができ、全体で2300体以上も確認されています。そのすべての像は髪型や表情などが微妙に異なり、一つとして同じものはないと言われています。

アンコールの世界観を表すレリーフ

第1回廊の美しいレリーフ

第1回廊の壁面に施されているのが御覧のレリーフ。当時アンコール王朝の世界観を如実に表しています。レリーフは大叙事詩「マハーバーラタ」とし物語「ラーマヤナ物語」、ヒンズー教の建国神話である「乳海攪拌」のワンシーンを再現しています。そのレリーフの迫力に観光客は漏れなく圧倒されることでしょう。また、死後の世界を再現した「天国と地獄」のレリーフでは、閻魔大王の裁きを待つ人や火責め、舌をとられている様子なども緻密に描かれています。ツアーに参加すれば、レリーフで描かれている内容も知ることができるでしょう。個人で行く場合は予め予習をしておくことをおすすめします。

神々の世界を見る第3回廊

インド思想が根付くメール山を模した塔

中央祠堂のある第3回廊。建造当時はヒンズー教でしたが、その後宗教改革が起きて、仏陀が祀られるようになりました。西面からは美しい参道の様子をうかがうことができ、正方形の回廊の要所に美しいデバターが配置されています。アンコールワットの見学としてはここが最後になるかと思うので、悔い残すことなく隅々まで見て回ってください。

1度では分からないアンコールワットの魅力

1度訪れただけでは、「バイヨンの方が見ごたえがあった」、「ロリュオス遺跡の方が荘厳」といった言葉も聞こえてきそう。しかし、2度、3度と訪れてみてください。「やっぱりアンコールの象徴だ」と考えも変わることでしょう。それだけの魅力と不思議が詰まっています。

<DATA>

名称:アンコールワット
創建:12世紀初頭
宗教:ヒンズー教

著者プロフィール

ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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