東南アジアといえば、青空の下に広がる市場をイメージしている人も多いでしょう。テント一つで雨や日差しをしのぐ露店でアクセサリーや洋服を買ったり、屋台グルメを食べる。そんな時間を旅先に求めている旅行者も多くいることでしょう。しかし、近年は東南アジアも右肩上がりで発展を遂げ、露店は町の景観をそこね、なおかつ屋台料理は衛生面に問題があり、営業ライセンスも取得していないところが多いことから、市街地ではめっきりと見なくなった国も多くあります。ベトナムも現在は高度経済成長期と言われていて、年々高層ビルや高級マンションが多く建つようになっています。
しかし、そんな発展をよそに、今日もいつも通りの日常をおくる青空市場がホーチミンの中心1区にあります。今回は「トンタッダム(Ton That Dam)通り」をご案内します。
アクセス
トンタッダム通りは市民劇場から南方に進み、グエンフエ通りを超えた向こうにあります。雑貨店やレストランが並ぶトンタッティエップ通りと接しているので、交差点を曲がって先に進むとすぐに青空市場は見えてきます。この周辺は外国人向けのお洒落ショップやカフェが並ぶ一方、カメラ屋通りとしての側面もあり、現地人がカメラの修理や購入するときは、この辺りに並ぶ個人商店に足を運びます。
青空市場を楽しもう
他の市場と比べると人通りはそれほど多くないのは、地元密着だから。日本のガイドブックでも数年前まではページの片隅に紹介されていましたが、最近は見なくなりました。一方ニッチな観光エリアが好きな欧米人旅行客の数は多くなっているような気がします。
トタン屋根で張り巡らされた商店が並ぶ頭上をご覧ください。昔ながらの素朴な家々がいまも続いていて、もちろん一部屋一部屋に人が住んでいます。おそらくここのアパートメントに暮らしている人たちで市場を作り上げているのでしょうね。一見するとただの古びたアパートですが、よくよく見ると、大きな窓に両開きの鎧戸。実はコロニアル建築の典型様式でもあります。クリーム色の外壁もコロニアルならではですね。
まるで昔から同じ時間をおくっているかのような、そんな時代錯誤の風景はどことなく懐かしくもあり、穏やかな日常風景に心癒されることでしょう。この風景のすぐそばには地上68階、265mのヘリポートつき超高層ビル、ビテクスコフィナンシャルタワーが建っています。かなり異様な光景です。
食品や洋服の卸業者と談笑をしている様子は見ていて微笑ましいものがありますね。
日本では1970年に若者のファッションの象徴として大流行したジーンズですが、現在はベトナムで人気沸騰中。ベトナムは日本よりも30年~50年ほど遅れていると言われていますので、日本でその時代に流行、発生した社会現象がベトナムで現在巻き起こっている状況です。時代の差を感じますね。
食品や日用品、子供のおもちゃまで揃っていて、また中には女性用の下着を売るお店も。ブラやパンツが恥じらいもなく無造作に野ざらし状態で放ってあるのは少し変わった光景に映ります。生鮮食品を扱う店はそれほど多くなく市場独特のツンとくる匂いもしないので、ゆっくりと散歩できるのもこの市場の魅力です。ベンタイン市場に売っているような雑貨土産はありませんが、日用品の購入をしたり、単に通りを往復するだけでもベトナムの風を感じることができるはずです。
ローカル度100%の昼食を
昼時になると、ご覧のようなところで食事をする現地人が増えます。近くにはオフィスもたくさんあるので、そこで働くビジネスマンやOLたちもここで食事を済ませる人も多くいます。おそらく旅行者の中には、「こういうところで食事をする人はお金がない人」と考えている方もいるでしょうが、そんなことはありません。屋台飯という一つのカテゴリーがベトナムでは確立されていて、誰もが屋台を好んで足を運びます。
昼時は大賑わいする地元密着のローカル食堂。毎日似た顔ぶれが並ぶので、お店の人と他愛のないやりとりも見られます。トンタッダム通りにもいくつかこのような食堂があります。こちらでは珍しく麺とご飯両方を扱っていました。麺はフーティウと呼ばれる南部名物の麺料理。フォーとはまた違う食感とスープが楽しめます。
ご飯料理を頼むときは、店頭に並んでいる器に盛られた料理の中から1~2品を指さして選んでください。ご飯とスープが無料でついてきます(おかわりは有料)。料理を選んだら席について運ばれてくるのを待つだけ。会計はテーブルで行いますので、手を挙げて従業員を呼んでください。レストランでは食べられない料理も多いので、気になったものは片っ端から注文してみるのもいいでしょう。値段は2品程度選んで3万ドン~4万ドンです。
穴場の青空市場
このトンタッダム通りにある青空市場は、日本人旅行者にとっては穴場。それも1区の観光エリアの中心にあるので、どこからでも歩いて行けるのも魅力です。ベトナムらしさが滲み出ているローカル市場へ一度足を運んでみてください。