ホーチミンからタクシーで西へ走ること20分ほど。中国漢字や中国語が飛び交うチョロンエリアに入ります。現在でも30万~40万人の華人がチョロンに暮らしているそうです。彼らのほとんどはベトナム語と中国語をしゃべることができ、ベトナム語が理解できない人はごく少数です。ただ、バイクタクシーのおじさんとかでは、時折みかけます。また、「外ではベトナム語、家では中国語」と言葉を区別している華人も多くいるようで、なかなか興味深い町と人です。
そんな中華色に染まったチョロンの中心市街地にある「オンボン寺」は、幸福の神が祀ってある由緒あるお寺。今回はこのオンボン寺をご紹介します。
アクセス
オンボン寺はハイトゥオンランオン(Hai Thuong Lan Ong)通り沿いにあります。西には黄金の龍の像がシンボルの龍公園があります。この周辺はチョロン観光の見どころとなる名所が多く点在していて、天后宮やチャータム教会、ビンタイ市場などすべて徒歩圏内です。
また、バスターミナルもあるので、ローカル旅を要望であれば、路線バスを利用してチョロンまで行くのもいいかもしれませんね。ちなみにビンタイ市場からオンボン寺までは、徒歩で10分少々です。
華人が建てたお寺
ホーチミン市内には由緒正しきお寺と呼べる寺院がいくつか点在しています。旅行者にとっては永厳寺や覚林寺が定番どころで、チョロンでは天后宮が名所の一つとして挙げられています。このオンボン寺はガイドブックでは片隅に申し訳ない程度で取り上げられていることがありますが、日本人旅行者にあまり知名度はない様子です。
オンボン寺は18世紀半ばに建てられ、その後複数回修繕を繰り返して今日に至ります。赤い円柱には中国漢字が刻まれていて、典型的な中華寺院の姿ともいえます。寺内部中央は四角く天井が切り取られていて、青空を仰ぐことができます。これも中国の寺の基本的な建築様式で、中部ホイアンでもよく見受けられます。
鐘楼。こちらも寺院を構成する必須のツールです。「有寺必有鐘、無鐘即無寺」という中国の言葉がありますが、これは「鐘がなければお寺ではない」という意味です。梵鐘という別称もあり、法具の一つで鐘の音を聴いた者は苦から解放されて功徳をなすといわれています。ただ、見る限りオンボン寺の鐘楼はあまり使われてはいない様子です。
除夜や非常時にはつかれているのでしょうか......。
西遊記の絵画
なかなか見ごたえのある絵画。子供も喜んでくれることでしょう。こちらは見てわかるように、玄奘三蔵率いる西遊記に出てくるお馴染みのメンバーたち。孫悟空は猿で如意棒を持っています。さらに猪八戒はくわを持って、外観は豚。沙悟浄はさすまたを持っていますが、こちらは人間もしくは仙人の様子。河童ではありませんね。
余談ですが、西遊記は水滸伝と三国志演義と並ぶ中国三大奇書の一つ。実在した玄奘三蔵の見聞録をもとに作られました。しかし、この架空の人物である孫悟空は、ベトナムでは神として祀られていることが多々あり、孫悟空の像が安置されているお寺も中にはあります。ただし、このようなユニークな絵画があるお寺は非常に珍しいので、チョロンに訪れた際は必ず立ち寄ってほしいところです。
幸福の神が祀られている
オンボンとは神の名前で、東南アジア諸国には時折みられる守り神です。中国由来と思いきや、どうやら東南アジアに移住したのち、華人が作った独特の神のようです。祀られているオンボンの上には「国泰民安」という文字が大きく見えますが、これは「国が平和であり、人民は平穏であること」を意味しています。
このことからも分かるように、オンボンはもともと土地の守り神でした。しかし、現在では幸福の守り神として知られていて、何か悪いことがあったときや、逆にいいことがあったときなど、チョロンに暮らす華人はあらゆる祈願でここに訪れます。こちらも天后宮と同様、参拝にくるほとんどは華人で、一般のベトナム人は訪れません。
中華寺院を散策
オンボン寺の中には秘密の通路のような穴場もあります。狭い通路や御覧のような丸穴を抜けた先にはなにがあるのか......。探検してみるのも楽しいものです。管理人や僧侶が暮らしていることもありますので、彼らの自室と思われる部屋には入らないでくださいね。
<DATA>
名称:オンボン寺(Chua Ong Bon)
住所:264 Hai Thuong Lan Ong St. Dist.5. Ho Chi Minh
営業時間:6:00~17:00