ホーチミンの都会を散策するのもいいですが、せっかくベトナムに来たのだから、大自然のメコンデルタ地方へも足を延ばしていただきたいところです。その目に映る風景は日本とはかけ離れたものばかり。脳裏に焼き付けるもいいですし、カメラを持ってシャッターを切るのもいいでしょう。
今回は、メコンデルタ旅行でこれだけはしっかりと見ていってほしい7つの風景をご紹介します。
町が変われば「車」も変わる
高度経済成長期の真っただ中のベトナムでは、都市部を中心に車も多くなってきました。もともとバイク社会が発展した国ですが、所変われば人々の移動手段も変わるのは、旅行者にとっては新鮮そのもの。例えば、ホーチミンやハノイといった観光エリアでも見られる三輪の人力車のシクロは、もともとは庶民の代表的な移動手段でした。
メコンデルタ地方では、まだバイクや車が民間に浸透していないところもあります。例えばカイベーの町では、荷物を運ぶときは「セーラム」と呼ばれる三輪の屋根付きバイクがいまだ主流。タイのトゥクトゥクと同じ格好をしています。さらに奥地へ行けば、チャウドックの「セーロイダップ」も見どころ。自転車の後ろに2輪がついた二台をつけたもので、荷物も人も運ぶため、そこで暮らす現地人の足として活躍しています。また、海沿いのカーマウと呼ばれる港町では、バイクよりもボートが主要の移動インフラ。人々はお金を貯金して、バイクや車ではなく小舟を買うのです。
南国市場の真骨頂「水上市場」
メコンデルタ地方の名物市場である「水上市場」。一昔前まではカントーより奥地に行かなければ見学できなかったことから、日帰りではきびしい観光スポットでした。しかし、ここ数年で比較的ホーチミンよりのカイベーの町で行われている水上市場が観光地化されてきたため、旅行者でもツアーを利用して気軽に行くことができるようになりました。
水上市場は早朝の5時~8時くらいがピークで、お昼の12時程度までやっています。大小の商船がメコン川の支流を行き交い、売買を繰り広げている光景をボートに乗って鑑賞することができます。また、船上で暮らす現地人もいます。船首で洋服を干したり、キッチンで料理を作って甲板で食事をしている様子なども日本人にとっては目新しいはず。
女性のあこがれ、男子の目の保養「アオザイ美女」
ベトナムの伝統衣装であるアオザイは、近年都市部では廃れてきた感じがします。若者はファッションに敏感になり、アオザイ着る機会も減ってきました。指定の制服がないベトナムの学校では、毎週1日はアオザイで登校するアオザイデーを作るようにしています。しかしメコンデルタ地方では、まだまだ指定の制服として純白のアオザイをそこかしこで見ることができます。
白い上衣と黒の下衣がセットになったアオザイは、エスニック香るベトナム美女の象徴。アオザイ美女の写真を撮りたい旅行者も多いことでしょう。メコンデルタの人々は男性も女性もおおらか。頼めば一緒に写真を撮ってくれることもできるでしょう。
小さなコロニー「水上に建つ家々」
メコンデルタ地方にはまだまだ多くの水上に建つ家々を見ることができます。カイベーやカントーといった水上市場付近や、チャウドックの後江などにもあります。高床式のように立つ家々は民家だけではなく、工場、学校、ガソリンスタンドとさまざま。小さなコロニーが完成しています。
そこで生活する人々を観光の目で見るのもいいですが、彼らの多くは陸に土地を買うお金がない人だということも忘れてはなりません。近年政府は水上の家々を撤廃するのではなく、正式に認めて住所を配布する動きが見られます。住所がなければ仕事にありつくことができないからです。そういった背景もできるだけ学んでおくといいでしょう。
世界中の旅行者を魅了する「メコン川」
東南アジアで最も広大な川であるメコン川は、中国、タイ、ラオス、カンボジアなどを跨ぐ世界でも典型的な国際河川の一つ。全長4000km以上に及び、まるで海のような大海原の中を高速ボートで疾走することができます。川は茶色に濁っているように見えますが、これは海底の土色とのこと。
メコン川はメコンデルタ地方に9つの支流があることから、人々は「九龍(クーロン)」と呼ぶこともあります。大自然の雄大さを感じ取ることができる一コマとなると同時に、ベトナム旅行に浸ることができます。
ベトナムだからこそできる、「少数民族と交流」
全国53の少数民族とキン族(ベトナム人)で構成されている多民族国家のベトナム。メコンデルタ地方にも少数民族の姿をみることができ、代表なのはチャム族とクメール族。いずれも町によっては市街地でも見ることができるほか、ベトナム語も流暢に話してベトナム人とも交流を図っています。
クメール族はカンボジア人の末裔。昔この地はカンボジア領であり、多数のクメール人が住んでいました。その後ベトナムの南進によって、メコンデルタはベトナム領となりますが、現在でもこの地に残るクメール人がいて、彼らは少数民族のクメール族としてメコンデルタ各地に暮らしています。一部彼らの居住地は観光地としていくこともできますので、現地で情報を収集しましょう。
昔はカンボジアだった。「遠く見渡すカンボジア領」
カンボジアやハーティン、フーコック島といったカンボジア領と国境を接する町にいったら、景色のいい高台に足を運んでみてください。「この先の向こうに見えるのがカンボジアだよ」とベトナム人が教えてくれることでしょう。島国である日本では想像しずらいですが、カンボジアとベトナムは陸続き。船でも飛行機でも歩いてでもカンボジアに行くことができます。
さらに見分を広めたければ、国境付近に行ってみるのもいいでしょう。カンボジアのクメール語とベトナム語が共存する不思議な町並みを見ることができます。ちなみに、写真上のこちらはチャウドックの「ヌイサンロッジ」というホテルから見た光景。田園風景の向こうはカンボジアだそうです。
ベトナム情緒に浸るメコンデルタ旅行
特に目的を持たずにいっても、そこで眺めることができる風景はどれも興味深いものです。バックパッカーにも人気があり、路線バスで一つずつ都市を渡り歩いている旅行者も多く見かけます。短期滞在であれば、向かう町だけを決めて、現地でなにをするかは当日決めるのもいいでしょう。素朴な町を歩いて新しい発見をする。ここで紹介した風景を愛でて、世俗から離れた時間を満喫する、そんな旅はいかがでしょうか。