1993年に、ベトナムで初となるユネスコ世界遺産ができました。それが古都フエの建築物群です。具体的には阮朝王宮を中心に、歴代13代阮朝時代にできた建築物を指すようです。
今回紹介するのは、12代カイディン(啓定帝)の陵墓。中国を君主にしていたかつてのフエ、および、ベトナム各地の陵墓、廟とは明らかに異なる華々しい雰囲気や装飾にご注目ください。
ツアーに参加するのがおすすめ
カイディン帝陵はフエ市街地南方、雑木林を潜り抜けた先にあるため、自力で行くのはかなり困難です。バイクをレンタルするのもいいですが、まず道に迷ってしまうことでしょう。おすすめはツアーに参加することです。このほかにミンマン帝やトゥドゥック帝の帝陵を回る半日ツアーが現地で催行しています。一番効率よく、時間と予算の節約にもなるので、基本は世界遺産巡りに関しては、ツアーのお世話になると考えた方がいいでしょう。
西洋の雰囲気漂う外観
石段を上がり続けると見えてくる建物がこちら。石柱、壁、屋根、すべてに装飾が施されている様は圧巻です。カイディン帝の時代は中国の支配が終わり、フランスの統治下時代でした。中でもカイディン帝はフランスの美術文化に魅せられた皇帝の一人で、積極的にフランス文化を建築物に取り入れました。
西洋と東洋の調和
陵の前にはご覧のような人の石像が立っています。よく見るとひとりひとり人相が異なり、中国の兵馬俑を彷彿とさせる光景です。人のほかにも馬や象の石像もあり、これらはミンマン帝でも見られるため、中国の思想を受け継いでいるようです。彼らは陵に祀られているカイディン帝の霊魂を守っているとされています。
フランスの華やかな装飾や思想をこよなく愛したカイディン帝ですが、実際はそれだけにとらわれることなく、中国を中心とした東洋の美も建築様式に取り入れているのがわかります。カイディン帝自体は特定の信仰している宗教をもっていなかったため、不特定の宗教建築も使われているのも、この陵の特徴です。
陵の中は美の集大成!
こちらが陵の内部。ツアーの団体客でいつも賑わっています。日本人ツアー客も多く、あちらこちらで日本語ガイドの説明が聴こえてきます。写真をみて分かる通り、カイディン帝陵は他のどの皇帝の建築物にも見られない華やかさがあります。
ここでも中国風の神龍をみることができますし、陶器の美しい破片がいたるところに埋め込まれています。もちろんこれらはフエ国民の税金によってつくられたもの。この陵を建設するにあたって、カイディン帝は大増税を実施し、国民は大反発しました。「フランスの傀儡」とも呼ばれたり、革命家ホーチミン氏も批判を繰り返していました。
内外装はバロック様式をベースにしているが、陶器やガラス細工といった装飾はアジア各国から輸入。また、東洋独特の装飾も見られます。
12代カイディン帝の遺体が眠る
カイディン帝は1916年~1925年の9年間皇帝の座に君臨していました。幼少のころから病弱だったため、40歳のとき結核により死去。その後は長男が13代保大帝として皇帝に就いて、1945年に長きにわたった阮朝時代に幕を閉じることになります。
写真のこちらはカイディン帝の像。全身が金箔で覆われていて、贅沢で自己顕示欲の高さが見られます。この像の下には帝の遺体が眠っているとされており、歴代阮朝皇帝の中でも遺体の場所が判明しているのは、このカイディン帝のみといわれています。像のある部屋周辺には当時の遺品も展示されているので、そちらもご注目ください。
見ごたえは十分
フエ観光で見学できる陵の中では、もっとも視覚的に華やかなため、見ごたえがあります。歴史を知らない旅行者であっても、日本語ガイドの説明でなんとなく時代背景がわかってきますし、現場の雰囲気だけでも楽しむことができるはずです。是非、カメラのシャッターを切りながら、カイディン帝が桜花した時代に耽ってみてください。