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あの時代はよかった......、そんな余韻に浸れる「レストラン・タイム・ビストロ」

南部ホーチミンは、かつては「サイゴン」と呼ばれていました。フランス統治時代の19世紀から20世紀半ばにかけての約80年間、ここホーチミンは南ベトナムの首都サイゴンとして栄えていました。そんな60年の時を遡って、サイゴンの雰囲気を楽しむことができるのが、今回紹介するレストラン「タイム・ビストロ」です。

場所はグエンフエ通り

夜は美観を放つ

ホーチミン旅行者にとって、覚えておかなければならないメインストリートはいくつかあります。タイム・ビストロがあるグエンフエ通りもその一つ。グエンフエ通りは人民委員会庁舎を起点に、左右に国営5つ星ホテルのレックス、そしてコロニアル様式のショッピングセンター・ユニオンスクエアが建ち、その並びには外国人向けの洒落たカフェレストランや4つ星ホテルが終点のサイゴン川まで並んでいます。通りの幅非常に広く、ドンコイ通りやレロイ通り、パスター通りよりも目抜き通りに相応しいという呼び声もあるほど。


タイム・ビストロはそんなグエンフエ通り沿いにあり、しかも市民劇場や人民委員会庁舎からは徒歩3分程度という好立地。世界中の旅行者がひっきりなしに行き交う場所に建っています。

店頭に佇むサイゴン女性が目印

白いアオザイ女性。ベトナムの象徴

店頭には白い上衣に黒い下衣を着たアオザイ女性が立っています。一見普通のアオザイにも見えますが、こちらもホーチミンがサイゴンと呼ばれていたころに若い女性の間で着られていたアオザイです。生地は現在と比べると質はそれほどよくはありませんが、何よりも時代を感じます。みなさんはピンとこないかもしれませんが、年配のベトナム人が見たら、「懐かしいね」と言ってくれるそうです。

1960年代にタイムスリップ

奥行きのある店内

タイムビストロは2階建てのレストラン。昼は明るい日差しが店内をくまなく照らし、夜は橙の照明が落ち着いた雰囲気を演出してくれます。雰囲気は19世紀半ばから20世紀半ば。約1960年までのサイゴンを再現しています。端的に言えば、ベトナム戦争がはじまる前の、フランス統治の時代ですね。


1階フロアはテーブル席が等間隔で設置。十分なスペースを設けられているので、隣の客に談笑の邪魔をされることもありません。面積はそれほど広くはありませんが、俗にいうアットホームとは異なり、きちんと客をもてなす気品ある雰囲気が漂っています。

この時代に憧れを抱くホーチミン人も多い

フランス統治時代。いわゆる植民地の時代は、決して華々しいものではありませんでした。特にサイゴンは「フランスがでっち上げた傀儡の国家」とも揶揄されていました。しかし、当時は現在のハノイ、旧北ベトナムと比べると、富と資源があったのも事実です。南北ベトナムともに貧富の差はありましたが、南ベトナムは富裕層が多くいましたし、メコンデルタ地方の豊かな資源は、ありあまるほどの食料を提供してくれました。

フランス統治が遺していったもの

フランス統治時代には、さまざまなフランス文化が流入し、現在も伝えられています。その一つがカフェ文化。ホーチミンを歩けば、日本のコンビニのようにカフェを見つけることができます。コーヒーはフランス流のドリップ式が主流で、若い女性もみんなコーヒーを飲みます。

写真上の壁に描かれているイラストは、ホテル・コンチネンタルです。4つ星ホテルのこちらは、市民劇場の隣に建つ格式高いホテル。サイゴン時代に建てられた、ホーチミンで最も歴史の長いホテルです。コンチネンタルの外周はフランス式のカフェレストランとなっていて、店名は何度か変わっているものの、スタイルはお馴染みのオープンエア。コロニアル建築の建物を眺めながら食事やカフェをとることができます。タイム・ビストロの店内には、こうしたサイゴン時代の当時の風景をイメージしたイラストがあちらこちらに描かれています。

ディナーでおすすめの2階席

描かれているのはあの名所

2階席はさらにムードがある空間。フロア奥は大きなガラス張りになっていて、そこからグエンフエ通りを望むことができます。グエンフエ通りは毎夜噴水によるイルミネーションショーが行われていますので、ここではそれを最高の眺めから鑑賞することができます。異国情緒漂うひとときです。

2階フロアの壁に描かれているのは、ホーチミン旅行でもお馴染みの名所「ベンタイン市場」と「聖母マリア教会」です。いずれもサイゴン時代に造られたホーチミン最大の観光スポットでもあります。

ここでしか食べられないサイゴン料理を

南ベトナムの名物料理が名を連ねる

サイゴン料理は主に、田園で培われた素材を活かした素朴な料理が中心となります。日本人にも馴染みのある生春巻きは、サイゴン料理の王道どころと言えます。それ以外にも揚げ春巻き、レモングラスと豆腐の料理や緑豆を素材にしたものなど、他のレストランでも食べられる料理から、ベトナム人でも滅多に食べる機会がないものまで、サイゴン料理全般を食べることができます。

おすすめの一品

他のレストランではほとんど食べることができない

「タロイモと鴨肉のフライ」

日本でもよく食べられているタロイモですが、サイゴン料理で扱う定番の素材でもあります。そのタロイモと同じく昔から食べられている鴨肉を合わせてフライにした料理です。サクッとした衣と舌でとろけるような柔らかなタロイモ、そして香ばしい風味を漂わせる鴨肉が調和した一品。他のレストランではまずお目にかかれないタイム・ビストロ独自のサイゴン料理と言えるでしょう。

ベトナムと中華の融合はそれほど珍しくない

XOバイン・クオン

バイン・クオンとは米粉をクレープ状にした食べ物で、中には挽き肉やきくらげ、野菜などが詰まっています。タイム・ビストロでは、バインクオンにXO醤をかけて楽しみます。XO醤は中国広東料理の醤油として日本でも認知されていますね。ベトナム料理と中華の融合はさして珍しくはありません。中国のベトナム侵略の歴史は1000年と言われており、現在でもベトナム各地に多くの華人が暮らしています。特にホーチミンではベトナム最大規模の華人の町「チョロン」があるほど。

他とは異なる上質の生春巻き

生春巻き

ベトナム料理を象徴する「生春巻き」。中国語でもベトナム生春巻きと表記されるほど。サイゴンの伝統料理といえるでしょう。ちなみに、生春巻きの生地となるライスペーパーは、メコンデルタ地方が特産地。一枚一枚丁寧に蒸したライスペーパーを作る職人は、メコンデルタの各地にいますが、近年は減少傾向。伝統を守る運動もされているほどです。

タイム・ビストロのオリジナル料理

日本の調味料も含まれている

エビのワサビ和え

こちらはタイム・ビストロでしか味わうことができない完全創作料理。南国メコンデルタの大地で収穫された質のいいドラゴンフルーツのみを使うこだわり具合。ドラゴンフルーツをくりぬいて、そこに一口サイズにカットした果肉とエビをワサビマヨネーズで和えた料理です。タイム・ビストロの一番の自信作でありながら、値段も22万ドンと注文しやすい価格設定にしているのは、一人でも多くの旅行者にベトナムの味を知ってほしいというオーナーの良心によるもの。是非一度試食してみてください。

<DATA>

名称:タイム・ビストロ(Time Bistro)
住所:44 Nguyen Hue St,Dist.1
電話番号:0989-104-633

著者プロフィール

ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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