フーコック島は近年旅行者に注目されはじめている、ベトナムのリゾートアイランド。一昔前までは赤土が続く道路がどこまでも広がる町で、観光インフラが整っていませんでしたが、ここ数年で政府がフーコック島の観光客誘致に力を入れ、現在では道路整備、ホテル、観光スポットなど、あらゆる面がカバーされつつあります。
今回ご紹介するのは、戦争遺産「ココナッツプリズン」。毎年1万人以上の観光客が訪れる、フーコック島で人気のスポットです。
アクセス
ココナッツプリズンの場所は、フーコック島南部。大きく弧を描いて車を南東方面に走らせ、やがて見えてくるサオビーチやケムビーチの手前となります。道中には放し飼いされている牛や古くからある家屋、ヌクマム工場など、フーコック島ならではの素朴な風景を見ることができます。
もしバイクで来るのであれば、目についた場所があれば停まって、少し散歩してみるのもいいでしょう。
ベトナムの負の遺産「ココナッツプリズン」
近代に入って、ベトナムでは大きな国内戦争が2つありました。1つは1946年〜1954年に行われた、いわゆるフランス解放戦争。こちらが第一次インドシナ戦争となります。
続いて1960年〜1975年にかけて行われた南北統一をかけた戦争が第二次インドシナ戦争。こちらはベトナム戦争と言う名で知られています。
ココナッツプリズンは1953年に作られた刑務所となります。
フーコック島はご存知の通り、ベトナム最西端の離れ小島であり、メコンデルタ地方の端でもあります。ですので、ここはコンダオ島のような流刑地としての存在。日本でいう網走刑務所のようなものです。
ベトナムには有名な刑務所がいくつか観光スポットとしてあり、例えばハノイのホアロー収容所。こちらはフランス人が造ったベトナム人を収容するための刑務所となります。そして、ココナッツプリズンは、ベトナム人が造ったベトナム人を収容する刑務所。同じ刑務所でも抱える意味が異なります。
当時を再現する生々しい収容と拷問の様子
ココナッツプリズンが本格的に使われたのは、1960年以降のベトナム戦争中。延べ1万4000人以上の犯罪者がここに流刑されました。流刑された罪人は主に反政府や北ベトナム軍などです。
収容所には檻の四方そして敷地を囲むすべてに有刺鉄線が張り巡らされていました。ここに閉じ込められたベトナム人の囚人は、同じベトナム人によって拷問を繰り返され、劣悪な環境で生き長らえていました。
ここでの酷い拷問の記録は、正確には残されていません。ただし、できるだけ当時を再現しているといわれ、プレハブ小屋の中には南ベトナム軍が拷問している様子を模型で再現しています。
拷問の中身は非常に残虐極まりないものでした。鉄棒でリンチされることはもちろん、コンクリート攻め、電球を目に近づけて眠れなくしたり、ロープで宙吊りにされて殴られたり、体中に電気を流されたりと、非人間行為が日々されていたと言われています。
現在のココナッツプリズンの存在意義
ココナッツプリズンは1996年に観光スポットとして、一般に開放されました。それ以来毎年1万人以上の観光客が訪れるフーコック島旅行の人気のスポットとして定着しています。きれいごとは決してない戦争の生々しさ、残虐さをこの目で焼き付ける意味でも、ココナッツプリズンはマストで訪れてほしい場所。ビーチリゾートとしてのフーコック島を楽しむと同時に、是非こちらにも足を運んでみてください。