ベトナム人は大のサッカー好きの国。どこの地域でもサッカーの試合は非常に盛り上がりますし、勝っても負けても大勢で町中で盛り上がり、一種のお祭りのよう。
そこで、今回はベトナムサッカーの歴史を塗り替えた伝説の試合、AFCカップ(アジアカップ)U23のウズベキスタン戦当日のベトナムをお届けします。
ベトナムにおけるサッカーの位置づけ
ベトナムでプロサッカーリーグが創設したのは2007年のこと。まだ10年ほどしか経っていない浅い歴史となります。しかし、サッカー熱は昔から非常に盛ん。サッカーの国際試合が始まると、どこのカフェでも全部のテレビにサッカーを映したり、特別大きなスクリーンを用意して、みんなで試合を見て盛り上がります。
ベトナムサッカーのレベル
ベトナムはまだ歴史も浅いことから、強さでいうと、正直弱いレベル。FIFAランキングでは110位台。東南アジア選手権(現在のスズキカップ)では、毎年準決勝で敗退する常連。決して強いイメージの国がない東南アジアでは、タイやシンガポール、インドネシアがトップを争い、ベトナムは次点に甘んじています。
「AFCカップU23.2018」は歴史的快挙
先日開催されたアジアカップことAFCカップのU23。23歳以下の若手で構成される試合ということで、日本では国民全員がワールドカップのように騒ぐということはありませんね。しかし、ベトナムでは事情が大きくことなるよう。まず、ベトナムでは国際試合に関してはどの試合も区別なく同様に盛り上がります。
そして、通常では即敗退していたものの、今回はイラク、カタールと格上の相手にたて続けに劇的勝利を呼び込みました。しかもいずれも延長戦の末のPK。白熱した試合を国民は最後までじっと見守り続けた結果となります。
そしてウズベキスタンとの決勝戦当日......
2018年1月27日に、AFCカップ決勝戦「ベトナムVSウズベキスタン」が行われました。時間はベトナム時間で15時。午前中から町は落ち着かない様子。多くの人々はベトナム国旗の赤い洋服を来て準備をしています。また、広場や公園、市民センターでは特設ステージが設置され、これから迎える旧正月用のダンスイベントもここで披露。場の空気を盛り上げていきます。
領事館が注意喚起をするほどに
以下はホーチミン在住日本人が受け取る領事館のメール内容の一文。
「ベトナムにとって初めての決勝戦であり、試合終了後は、その勝敗に関係なく興奮した市民が多数バイクを乗り回して、ホーチミン市内の主要道路で大規模な交通渋滞が発生する可能性があります――略」
このような注意喚起がメールで送られてきました。これだけでもベトナムでは異常な事態であることが分かります。
町中のカフェはどこも御覧のような状態。在住外国人も揃ってベトナム人を応援します。国旗のフラッグも持って老若男女関係なく見守ります。ボールを奪い取ったときやシュートを放ったときにも大歓声。シュートを決めたときは皆総立ちで声を上げて叫びます。
結局延長戦の末、逆転ゴールを決められて負けてしまいましたが、ベトナム人にとってAFCカップで準優勝というのは歴史的偉業。しかも今回のウズベキスタンは本当に強かったですね。その前に行われた韓国戦は4:1で勝利し、日本戦も4:0で勝ち進んでいます。
そして写真上がサッカー後の様子。
まるで街宣車のよう。有名人やお偉い政治家がVIP車で通行しているようですが、こちらは車も含めて全員が一般人。試合後は車やバイクに乗って、大勢が町中を疾走。国旗を掲げ、数百メートル列を作るほど。車から乗りだして手を振ったり、爆竹を鳴らしたり、ラッパを吹いたりと、日本の暴走族も顔負けです。
このお祭り騒ぎは実に深夜まで続きました。通常なら公安警察が出てくるところですが、彼らもこの流れには逆らえず、交通整理をしたり、事故に備えて待機するので精一杯。当日ベトナムに来た旅行者はさぞかし驚いたことでしょう。
ベトナムの明るい未来に期待
近年の日本サッカーは「ワールドカップに行くのは当たりまえ」、「アジアで勝つのは当然」というように、負けが許されないムードですね。しかし、ベトナムはまだまだ弱い国なので、負けて当たりまえ、勝ったら大喜びといった風。大人が子供のサッカーを見守り、一点とったら両手をあげて歓喜するような、そんな温かな雰囲気が伝わってきました。