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ハノイの旧市街で古きベトナムを発見

ホアンキエム湖の北部からものの数分歩くと見えてくるのが、古めかしい家々が軒を連ねる一帯「旧市街」です。まだ南北が分断国家で、ベトナムは中北部のみだった時代、首都はハノイではなくタンロンと呼ばれていて、現在は世界遺産に指定されているタンロン城が天下のおひざ元でした。そのタンロン城は当時は非常に広大な面積を持っていたとされていて、その城下町は現在のホアンキエム湖傍、そして旧市街まで広がっていたという説が有力。今回散歩する旧市街は、そのタンロン城下町の最大の商業区であった場所です。

さまざまな古き良き生活風景を見ていきたいと思います。

旧市街の散歩のポイント

ターヒエン通りにて

旧市街はのちに「ハノイ36通り」とも呼ばれるようになりました。この36を意味するのは、組合の数。旧市街は幾多の通りで構成されていますが、その通り沿いに建つ商店には統一性があることが分かります。ここが城下町だったとき、通りは「ブリキ店の道」、「茶葉の店の道」、「漢方の店の道」といった風に、各組合ごとに通りが綺麗に分かれていました。現在もその名残はいたるところで見ることができます。

茶葉を売る店が並ぶ

こちらは茶葉を売るお店。どれも袋詰めで大量に商品が並んでいます。品質管理などはされていないので、お土産に買うのはどうかと思いますが見ている分にはとても面白いものです。ここら辺のお店はすべて個人商店。昔から代々受け継がれているため、近所のお店はライバル店でありながらも良き友人関係が続いているようです。暇なときは常に談笑に耽り、因果な時間を潰します。日本の商店街のような昭和チックな時間を除き見ることができるでしょう。

古き佇まいの建物を見上げる

趣のある町並み

こちらは旧市街のどこを歩いていても見られる光景。ハノイの中心市街地はここ10年でかなり様変わりしました。高級マンションや5つ星のホテルが並び建ち、タイ湖周辺には富裕層が暮らすエリアができて、日本人でもなかなか手が出ないような値段のヴィラが並ぶようになりました。また、フランス統治時代の名残を受けたコロニアル建築の建物も観光客に支持されていて、東南アジアとしてのベトナムのイメージが徐々に薄くなってきている印象を受けます。

人々の何気ない生活風景が旅行者には優しい

そんな中、旧市街は旅行者の多くが求めている素朴な旧家を見ることができます。実は、このエリア内にある家は政府が管理しているため、居住者は好き勝手に改築や修繕ができないようになっています。世界遺産には登録されていないものの、ベトナム政府の指定する歴史保護遺産になっているためです。

昔から続く花市

毎日花を売る青年

ハノイの名物ともなっている花市。タイ湖周辺では早朝に花市が開催されますが、旧市街では朝から晩まで通り沿いはカラフルな花々で彩られます。これはホーチミンでは見られない光景です。ホーチミンはハノイと異なり熱帯気候に属しているため、花の種類は少なく、また、その多くは中南部の高原地帯ダラットから運ばれてきているものとなります。ハノイは温暖気候に属しているため、より多くの花の栽培が可能。

花束が並ぶ

また、ベトナム人にとって花束というのは非常に身近な存在といえます。仏教では寺院に参拝する際には決まって供える花束を買っていきますし、女性の日、教師の日、バレンタインデーなど誰かを祝う、労う祭日にも決まって通り沿いは花を売る行商で賑わいます。花売りを見ていると、昔から続く彼らの習慣の一端をのぞくことができるでしょう。

主婦たちはスーパーに行かず、ここで食材を調達

肉屋

旧市街のいたるところに見られる肉屋。現地人はスーパーで買い物するよりも、みなさんここで買い物をします。肉はすべて量り売りで、好きな部位を好きなだけ購入することができます。彼らが重要視するのは値段よりも気軽さ。スーパーはたくさん商材があり、レジで待たされたりと疲れてしまいます。一方旧市街であれば、肉を買いたければ肉屋に行き、野菜を買いたければ野菜屋に行けばいいので、非常に手軽です。中には豚一頭丸々売っているところもあります。ちなみに、ベトナム人にとって鶏と鴨は一羽丸ごと買うのが普通。頭から足のつま先まで綺麗に調理します。

現地人と一緒に食堂グルメを

毎日ここで豚肉を焼く女性

旧市街を歩いていると、どこからともなく香ばしい肉の焼ける香りがしてきます。近寄ってみると、今度は道が煙で満たされているところを発見。傍まで寄ると、炭で豚肉を網焼きしている女性が。こちらは古くから続くコムタム食堂。コムタムとはお米を3分の1程度に砕いたご飯で、油ネギとヌクマムを垂らした豚肉をご飯にのせる、いわゆる皿飯となります。一食150円程度で食べられますし、レストランでは扱っていない正真正銘の大衆料理です。

旧市街で毎日見られる光景

旧市街には冷房つきのお洒落なカフェはありません。その代りに、町のいたるところで昔ながらの路上カフェを見ることができます。プラスチックの小さな椅子に腰かけて、ベトナムコーヒーや豆乳といった昔から嗜まれている飲み物を飲む。1人の時間を楽しむのもいいですし、隣あった人とつかぬ間の談笑を楽しむのもいいでしょう。ベトナム人は人見知りをしないので、突然声をかけられるのは慣れっこ。 特に外国人旅行者であると分かると、むしろ向こうから積極的に声をかけてきてくれるかもしれません。

ベトナムの古きを体験しよう

ベトナムの古き習慣と風景に異国を感じたいのであれば、旧市街を歩いてみるのがおすすめです。ベトナムらしい素朴な光景に癒されて、しばしの間日本を忘れ、古き良き旧市街に流れる時間に浸ってみてください。

著者プロフィール

ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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