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ベトナム人の若者の日常を覗いてみる

ホーチミンやハノイへ旅行へやって来ると、ついつい博物館や雑貨店、スパといった名所巡りをしてしまいがち。現地人が行き交うローカルエリアや、近所の人たちが集う公園などを素通りしてしまう人が多い印象を受けます。観光スポットを巡るのもいいですが、現地人の暮らしを少しだけ覗いてみる時間も貴重なものです。ふと立ち止まって路地を歩くと、そこには住宅街が広がり、子供たちが遊んでいる光景を垣間見ることができます。また、市内の公園には夕方頃になると、バドミントンや社交ダンス、エアロビクスをするため多くの老若男女が集います。そんな彼らと少しだけでいいので同じ時間を共有してみてはいかがでしょうか。

今回は、ベトナム人の若者の日常をお届けいたします。

公園は老若男女憩いの場

観光エリアの真ん中にある4月30日公園

ベトナム人にとって公園は、ただの高齢者の集いの場ではありません。どちらかというと、学生風の若者が多く集まります。朝方は大人たちが出勤前にバドミントンに汗を流したり、子供たちが親の手を引いて散歩する穏やかな光景を、日中は学生がベンチや地べたに座って行商からお菓子を買って食べながら談笑し、日が暮れてくるとおばちゃんたちが集まって大音響でエアロビクスに興じる場面をみることができます。

これは全国どこでも見られる光景。ハノイであればタイ湖やホアンキエム湖周辺、ホーチミンであれば4月30日公園や9月23日公園などが観光客が行きやすい範囲内となります。おすすめは日中。学生たちがどのような時間を過ごしているのかが分かります。彼らは一人で読書に耽る、というよりは大人数で輪を作っておしゃべりするのが大好き。その輪に入れてもらうこともできるかもしれませんよ。

路地裏を歩くと現地人の生活臭が

ホーチミンのブイビエン通りの一角にある路地

続いて覗いてみるのは「路地裏」。大通りを歩いていると、しばしば写真上のような道幅狭い路地を見つけることができます。たいていは頭上に青看板があるので、それを目印にしてもいいでしょう。先は薄暗くてよく見えなく、夜はちょっと怖いですね。しかし、ご安心ください。基本ベトナム人の一般住宅はこのような路地裏に広がっています。大通りはお店のみが基本。

路地裏にはローカルな香りが漂う人々の何気ない生活の様子をみることができます。毎朝決まって同じ時間、同じ場所で営業するフォーやバインミーの屋台や、近所の人が行きつけにするヘア&ネイルサロンなど、彼らの密着した生活感をここで感じ取ることができます。

いまだ健在のローカルコンビニ

実情はコンビニよりも重宝されている

ベトナムには古くから御覧のような駄菓子屋風の個人商店の雑貨店が人々の生活の傍に密着しています。日用品から簡単な食品まで売っていて、コンビニほどの充実度はないものの、路地裏の住宅地にあることから今だに現役で活躍していて、コンビニよりも利用頻度は高いのが現状。このような日用雑貨店は「タップホア」と呼ばれていて、たいていは店名もない個人で小さく営むお店となります。昭和の日本を思い出す人も多いのではないでしょうか。

ちなみに、現状コンビニ市場も活性していて、日本からはファミリーマートとミニストップが参戦。いずれも現地人にとって知名度が高く、イートインの店舗が定番。カフェ感覚で利用する子供たちで賑わっています。

自転車もバイクも3人乗りは当たりまえ

田舎では自転車でもしっかりとヘルメット着用をする光景も

バイク社会のベトナムですが、子供や学生の間では自転車が普通。でもよく見てください。自転車に乗っているのはなんと3人。先頭の人が立ち漕ぎをして、真ん中がサドルに座り、3人目が荷台に座ります。荷台がない場合は2人でサドルに座ることも。昼間や夕方といった下校時刻では、白いアオザイの制服を纏った女子学生をよく見ることができます。穏やかなベトナムらしい風景ですね。

ちなみにバイクでは3人はもちろん4人乗りもよく見かけます。ベトナムの道路交通法ではバイクは原則2人乗りですが、子供は数に数えない傾向にあるようで、運転手のお父さん、子供2人、そして子供を挟むように最後尾にお母さんという順番が一般的です。

休日の2大定番コース

映画館はいつも人気のスポット

ベトナムには日本のようにいたるところに娯楽施設があるわけではありません。なので、彼らの休日の遊び場というのは極端に限られています。そこで、休日に彼らが行く2つの王道スポットをご紹介します。

1つはこちら、「映画館」です。チケット料金は日本円で300~600円(座席やシネマによる)と安く、月に1~2回ほど見に行きます。そのためか、映画の上映作品が入れ替わる頻度は早く、だいたい2週間ほどで次の作品になります。もちろん映画館でお馴染みのポップコーンも健在。日本と違うところは、"上映中はみんなで笑う"こと。お笑い好きのベトナム作品は、ラブストーリーだろうとヒューマンドラマだろうと、ホラーだろうと必ず笑いを含ませたシーンが散らばっています。その場面でみんなで声を出して笑って一体感を感じるのが普通だそうです。

カフェで何時間も居座るのも普通。カフェ天国といわれる意味が分かる

もう一つがカフェ。カフェは路上も含めてベトナム全国どこでもありますが、お洒落カフェの数はホーチミンが圧倒的です。人気のカフェを覗いてみると、いつだって現地人で混雑しています。彼らはベトナムコーヒーや今はやりのミルクティーを飲みながら談笑したり、あるいはパソコンでオンラインゲームをしたりと各々の時間を満喫しています。どんなに長居をしていても文句言われないのはとても魅力ですね。

旅行者にとってはベトナムコーヒーはやはり押さえておきたいところです。ほとんどのカフェであれば、必ずといっていいほど扱っていますのでご安心ください。ただ、最近はアラビカ種で挽いた日本と変わらない味のアメリカンやラテ、モカ、エスプレッソなどを出すカフェも多く、またミルクもベトナム独特のコンデンスミルク(練乳)からフレッシュミルクまで扱うところが多くなってきています。注文時は「ベトナムコーヒー!」とオーダーください。

ベトナム版ネット喫茶も大盛況

ベトナムの住宅地で日本を見ることができる

ベトナムにおいて、「バイク=ホンダ」というのはご存知の方も多いかもしれませんね。現在ではシェア65%を占め、最も品質が高いバイクとして知られています。それと同様に、ベトナムの「ネット喫茶=プレイステーション」であることはご存じないでしょう。ベトナムのネット喫茶は住宅地の中にあるので、観光散策の道中で見かけることはあまりありませんね。住宅街を歩いていると、看板に「PS」、「Play station」と書かれた看板があります。こちらがネット喫茶。中に入ると横並びにテレビとソファ席が並んでいて、仕切りはありません。オーダーできるのはドリンクくらいで、料金は1時間50~100円程度。客層はほぼ子供と男性で、1人でオンラインゲームに打ち込む人もいれば、友人同士でサッカーゲームをする人もいます。

大学生の生活を覗いてみる

卒業式の様子。自撮り棒は外せない

部外者が中学高校の敷地内に入ることは固く禁じられていますが、大学であれば入ることができます。語学系大学では、多くの在住外国人ここでベトナム語学んでいて、現地に溶け込んだ彼らの生活の様子も同時にうかがうことができます。写真上のこちらは卒業式の様子。ベトナムでは御覧のように黄色や黒、青といったカーディガンに四角い帽子をかぶった、いわゆる"アカデミックドレス"を着用した卒業式が主流。映画に出てくるような、みんなで一斉に帽子を空に投げることもやります。

大学を卒業したら保育士になるという学生

学生の多くは学業と並行してアルバイトにも従事します。アルバイトの平均時給は1万5000ドン、日本円換算で75円程度だから驚きですね。彼らは「社会経験を積むため」という理由でこの安い時給に納得しているようです。写真上のこちらはたこ焼きの屋台でアルバイトする学生の女の子。現在たこ焼きがホーチミンでブーム。楽しくアルバイトをしている様子をうかがうことができます。

都市部で起こる激しいラッシュアワー

ホーチミン1区の様子

ベトナム民間企業の定時は朝の8時から夕方の17時。業種によっては16時帰社もあるので、およそ16時から19時前後までは御覧のようなラッシュアワーが続きます。単なる渋滞だけではなく、排気ガスによる大気汚染も含めて東南アジア全体の社会問題にもなっています。バンコクやシンガポール、インドネシアにカンボジアでも都市部は同様の問題を抱えていますね。彼らは家路に着く人もいれば、毎週1回やっているフットサルや稽古に向かう人もいます。また友人や恋人と待ち合わせてレストランや屋台で食事をしたり、映画やカフェを楽しむ人たちも。夜の時間のはじまりです。

歩道が埋め尽くされるほど人気の屋台もある

ベトナム人はみんな屋台が大好き。女性同士、友人、カップル、男同士、ファミリーと客層問わず、老若男女の夜の遊び場として親しまれています。歩道に小さなプラスティックのテーブル椅子を並べて、みんなでワイワイするのが彼らの楽しみ方。彼らは「客が多いお店に行く」というDNAが刷り込まれている様子。夜のベトナム観光で体験してほしい時間の一つでもあります。

ベトナムらしい風景がそこにある

その他にはカラオケやビアクラブで楽しむ若者も多くいます。いずれにせよ日本とは異なる風景、雰囲気、様子を覗くことができるので、旅行者にはここで紹介したローカルな生活の場面を、一つでも多く見て行ってほしいです。

著者プロフィール

ペンネーム: サイゴンの便り
学生時代にベトナムの民話と民族を研究して以来、毎年一回はベトナム旅行を楽しむように。そして、2011年に念願だったベトナムへの移住が決定。現在はトラベルライターとして、ベトナム各地の観光情報を読者にお届けしています。旅行者が寄り付かないようなローカルエリアに住んでいるので、毎日のんびりとした素朴な時間をおくっています。趣味はバドミントン。

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