ベトナムでは古くから肉食文化が発達しています。日本でもお馴染みの牛肉、豚肉、鶏肉をはじめ、イノシシ肉、うさぎ肉、シカ肉、中にはネズミ肉や犬肉、カエル肉を好んで食べる人もいます。今回紹介するのは、その中でも老若男女に支持されている庶民派食堂料理である「ヤギ肉」。
日本では沖縄の人たちが食べるくらいで、本土では滅多に見かけない食べ物です。どんな味、食感がするのかは、実際食べてみてのお楽しみです。
どこでも食べられる食堂料理
ヤギ肉は冷房の効いたこ綺麗なレストランで出される料理ではなく、食堂で大人数でわいわい談笑してビールを飲みながら箸で突く大衆料理です。食堂の店頭には、たいてい店が扱う料理名の看板が掲げられています。ヤギはベトナム語で「DE(イェー)」。もしこの文字を見かけたら、そこはヤギ肉料理のお店です。
基本は専門店で食べるのがいいでしょう。数百種類のメニューを載せている居酒屋風のお店でも取り扱いはありますが、肉が薄かったり、品質が悪く味が落ちている場合が多々あります。
ヤギ肉を食べる前の準備
ベトナムのつけダレといえば、ヌクマムやヌクトゥンが代表的ですね。しかし、ヤギ肉を食べるときに使うタレはこちらです。この肌色の液ダレは豆腐を発酵させたもので、独特の匂いがします。味も少しクセがあり、初めての味で食べられない人もいることでしょう。しかし、残念ながらほとんどの専門店では、ヤギ肉のタレはこれ以外扱いがありません。
ただし、このタレも慣れてしまえば病みつきになる味となります。ベトナム人の生活を知る上では欠かせない調味料の一つでもあるので、食わず嫌いをするのではなく、多少無理してでも食べ続けてみてください。「おっ、この味と匂いに慣れてきた」と思う瞬間がきっとあるはずです。
また、備えつけのサテと呼ばれる赤い調味料を入れると、辛味がつきます。これはレモングラスと唐辛子を混ぜたもので、ベトナム人は好きですが日本人にとってはかなり辛いです。
つけあわせも
また、こちらも必ずといっていいほどどの店でも出してきます。こちらは漬物。ベトナムも日本と同様漬物文化があり、スーパーで気軽に買うことができます。家庭によっては自分流でオリジナルの漬物を作ったりするほどで、味もさまざま。少し酸味がかかっているのが特徴のこの漬物は、ヤギ肉を食べ続けて舌がしびれてきたときのアクセントにちょうどいいです。
スターフルーツは日本では九州南部および沖縄といった暑いところで栽培されている南国果実。ベトナムではメコンデルタで獲れる定番の植物です。こちらも薄く輪切りにされたものが皿に添えられてでてきます。ヤギ肉にのせて、一緒に食べてください。
焼き肉か鍋か......
食べ方は主に「焼き肉」、「鍋」、「炒め物」の3タイプに分かれます。いずれも人気で捨てがたいのですが、「肉を味わう」という点においては焼き肉がおすすめです。野菜もたっぷり食べたいという方は、焼き肉を一皿か2皿楽しんだあとに鍋を頼むのもいいでしょう。
焼き肉の場合は卓上コンロに鉄板が置かれて、たっぷりと油をひくのがコツ。お店によってはすべてスタッフが代わりにやってくれるところも多くあります。ただし、彼らに任せた場合は、お会計時に2万ドンほどチップを渡すのがいいでしょう。
名物「おっぱい肉」
ヤギ肉屋で必ず押さえておくべき料理が一品。それがこちらの「おっぱい肉」です。ヤギの乳房肉であるこれは、日本人ならほとんどの人が初めて食べることでしょう。ベトナムで乳房は「Vu(ヴー)」なので、「Vu De」と記載のメニューを見つけたらそれです。
肉厚の方がおいしく、コリッとした肉らしかぬ食感ですが、しかし、噛めば噛むほど肉の味を楽しめる変わった部位です。
焼くと御覧のような香ばしい色に。少し焦げがついていてもおいしくいただけます。逆にベトナムの食堂は衛生管理に心配があるので、しっかりと焼いて、生焼けは避けるようにしてください。
炒め物も堪能してみては
自分で焼くのは煩わしいという方もいます。南国のベトナムで冷房も効いていないので、汗をだらだらかきながら鉄板でジュージュー焼くのに抵抗がある人もいるでしょう。そんな方は炒め物をチョイス。
ただし、多くのお店に共通しているのが、「どこの部位かはわからない」ことです。「Thit De(=ヤギ肉)」でメニューは統一されていて、部位まで書いていないところがほとんど。お店の人に訊いてもわからないと返ってきます。
鍋を主役にするのも
ベトナム人に倣って鍋を選択するのもいいでしょう。大人数であれば経済的でもありますし、肉だけじゃなく野菜も食べることができます。最後は雑炊ではなく麺を入れるのがベトナム流。ブンやインスタント麺を入れて食べてください。鍋はベトナム語で「Lau(ラウ)」です。
また、鍋でおっぱい肉を食べるのはあまり聞きません。普通は別の肉らしい部位が一般的です。ヤギ肉屋に来る旅行者の多くはおっぱい肉を目当ての一つにしているかと思いますので、まずは焼き肉で食べるのがいいでしょう。
珍味も
写真のこちらはヤギの「脳みそ」を蒸したものです。ベトナムでは蒸したヤギや豚の脳みそをスープにして飲みます。「Oc=脳」なので、このメニューが合ったら是非試してほしいです。白子のような食感です。
また、こちらは仕入れの量が少ないので、遅い時間に行くと売り切れになっていたり、その日は仕入れがない場合もあります。こちらを食べたい場合は、まずあるかどうかの確認をしましょう。
B級グルメを堪能!
レストランで扱っていないB級グルメのヤギ肉ですが、ベトナム人はみんな大好き。なによりもおいしいです。ガイドブックではあまり紹介されていませんが、押さえておきたいベトナム料理の一つでもあります。ホーチミンの1区では少し見つけるのに苦労するかもしれませんが、そんなときはタクシーの運転手に頼めば簡単に連れていってくれます。不安な方はホテルスタッフに依頼するのもいいでしょう。