ホーチミンもここ10年でだいぶ様変わりしました。発展とともに、昔懐かしいものを置き去りにしてしまったものもあるでしょう。日本も同じこと。個人商店は廃れ、屋台が消え......。しかし、ベトナムではいまも変わらないものがあります。それが「市場」。近年は大型ショッピングセンターやスーパーマーケットが立つようになりましたが、市場は変わらず毎朝現地の人たちの活気に満ちています。
今回紹介する「タイビン市場」は、ホーチミンの中心にある最も大きな規模で、かつローカル色強い市場です。
場所はファングーラオ通り
タイビン市場のある通りは、バックパッカー街で有名な「ファングーラオ(Pham Ngu Lao)通り」です。ファングーラオ通りを最後まで進むと、大きなロータリーがあります。その左手に見える大きな屋内市場がタイビン市場です。市場回りの屋外にも店は溢れていて、通り沿いにはバイクをとめて日用品の買い物をする現地人で毎朝にぎわっています。
市民劇場や聖母マリア教会あたりから向かうのであれば、タクシーを利用するのもいいでしょう。5分くらいで到着します。ベンタイン市場からなら歩くこともできます。徒歩15分程度です。ただし、日中は暑いので15分といっても体力はかなり奪われます。厳しそうならタクシーを捕まえてください。
潮の香り漂う魚介エリア
タイビン市場は大まかにエリア分けされています。外は魚介と野菜エリアがあり、屋内は肉類と日用品、調味料エリアがあります。ローカル市場にしては規模は大きいですが、一通り見て回ったとしても30分程度あれば十分です。
魚は日本では見たことがないような種類も多くあり、また川魚もあります。横でピョンピョン飛び跳ねている食用カエルをさばくグロテスクな場面もあるので、小さなお子さんは見ないようにしましょう。その他タコ、イカ、エビも定番の魚介で、貝は種類が非常に豊富。ホーチミン市内だけでも何百もの貝の専門食堂があるほどベトナム人は貝料理が大好きです。
ベトナムの雰囲気感じる野菜エリア
続いてやってきたのは野菜エリア。日本でもお馴染みのものから、馴染みのない野菜、植物まで多種多様の品が揃っています。どのお店も扱っている品目はそれほど違いはありません。値段と人を見て買っているようです。ここは現地人のための市場なので、タイン市場のように高値を言ってふっかけるお店はありません。だいたいが相場の値段となるので、あまり値段交渉をする場面は見られません。
ライム、紫小玉ねぎ、赤唐辛子、青唐辛子、ニンニク、玉ねぎ、しょうが、とベトナム料理に欠かせないスパイスはすべてそろっています。これらは量り売りなので、欲しい分量だけ手に持って、お店のおばちゃんに渡します。そして量りに載せて計量して値段を教えてもらいます。
特にニンニクとライムはヌクマムのつけダレを作るために必要なので、ベトナム人は大量に買い込んでいきます。また、食堂を経営している店主も買い付けによく訪れます。
野菜は日本のようにすべてが同じ品質ではないため、実際手に持って品定めをする必要があります。また、ハーブや青野菜は、家に持ち帰ってからすぐに使えるわけではなく、枯れた葉や傷んだ茎、虫に食われた部分などをちぎって取捨する必要があります。それもベトナムの一般家庭では毎日見られる光景。
「タップホア」が並ぶ調味料&日用品エリア
屋内へ入って最初に目にとまるのが、店先に並んだ大量の調味料や日用品の山。注意して歩いてください。バッグが当たって山がくずれたら一大事です。ここではベトナムの生活に欠かせない品が並んでいます。調味料はヌクマム、ヌクトゥン、マントム、塩コショウなど十数種におよびます。日用雑貨もバッグや財布、サンダルといった服飾から下着や生理用品、浴用品まですべて扱っています。
このような小規模商店は「タップホア」と呼ばれていて、市場内だけではなく、町のいたるところで見かけることができます。さしずめベトナムで古くからあるコンビニといったところでしょう。
ベトナムの市場で最大の見どころは肉エリア
市場奥に広がるのは肉エリア。丸太のまな板の上でタンッタンッと中華包丁で肉と骨を切る音がリズムよく聞こえてきます。ここで買えるのは牛肉と豚肉がメイン。いずれも部位別に切り分けられています。またすべて骨ごと売るのがベトナムスタイル。
スーパーでも同じように、ベトナム人は骨がついている肉を買い、骨はダシに使って隅々で利用します。「骨の回りの肉は味がしみ込んでおいしい」とのこと。
一番人気は豚肉で、部位にもよりますがキロ7万~9万ドンの間で売買されます。牛肉はその1.5倍ほど高いため、ベトナム人の間では高価な肉となります。鶏肉はパック詰めされている肉をスーパーで買うか、市場で買う場合は一羽丸ごと買うのが普通です。
いずれも日本ではとうの昔に見られなくなった光景が広がっています。素朴な市場の風景にベトナムを感じられる方は、是非タイビン市場に足を運んでみてください。